生まれつき耳が聞こえない男女5人組が、息ぴったりにマイケル・ジャクソンの「Beat It」を踊る動画が、135.1万回再生を超える反響を呼んでいる。Instagramでは「身体にリズムが入ってるのですね、上手い」「才能と努力がすごい!」などの声が寄せられた。投稿者のゆうきさんも生まれつき耳が聞こえない中、ダンスだけでなく歌手活動も行っている。
ダンスを始めたきっかけは「オカザイル」
ゆうきさんがダンスを本格的に始めたのは21歳のとき。きっかけは子どもの頃にテレビで観たオカザイル(フジテレビ系『めちゃ×2イケてるッ!』で誕生したナインティナインの岡村隆史とEXILEによるコラボレーションユニット)だった。「山に住んでいたため音楽とは無縁な環境で育ちましたが、初めて心からカッコいいと思い、そこから遊びでEXILEのダンスを真似したりしていました」と振り返る。
最初は趣味だったが、練習するうちに本格的にダンスをしたいという気持ちが芽生え、21歳で上京。日中は仕事をして夜にダンスを学ぶ日々を送ったという。
耳が聞こえない中でダンスを始めた当初、難しかったのは「振りと音を合わせること」。聞こえていないだろうと思う細かい裏音などを、振りで音ハメ(音楽のビートやリズム、歌詞や効果音などのタイミングにダンスの動きをピタリと一致させる表現技法)することが難しかったと話す。
一方で、「聞こえていなくてもひたすら本家の動きやタイミングを見て繰り返し練習することで、聞こえるダンサーさんと変わらずにダンスができると思えた」と可能性を感じた瞬間を明かす。「耳を頼りにできない変わりに、目で健聴者よりも細かいところまで観察します」という。
影響を受けたアーティストと独自のスタイル
最初に影響を受けたのはEXILEで、いろいろな曲のダンスを踊れるようにDVDをたくさん観た。マイケル・ジャクソンも好きで、今でもYouTubeを観ているという。ダンススタイルについては、世界で活躍するダンサーのRIEHATAさんに憧れている。「ワークショップがあれば参加したり、YouTubeを観て自分の中で取り入れたりもしています」と話す。
曲を選んだり振付を考えたりする際は、「曲の背景やストーリーを第一に考えてそれに沿った振りを作ったり、今まで自分が学んできたダンスを取り入れて自分らしい振りを作ったりしています」と語る。
先天性難聴だからこそできること
自身の表現における強みについては、「先天性難聴として生まれたからこそ、いろいろなことに挑戦することで、自分と同じような方に勇気や希望、感動を与えられたり、誰かのヒーローになれたりするのではと思っています。先天性難聴である自分にしかできないことを追求する。それが強みでもあります」と話す。
同じように聞こえに難しさを持つ子どもたちや、何かを諦めそうになっている人たちに向けては、「人生は一度きりなので、やりたいことはとことんやってほしいです」とメッセージを送る。自身も高校生のときに校歌斉唱で隣にいた友達に「音程めちゃくちゃ外れてる(笑)」と笑われ、それ以来口パクで歌うようになった経験がある。しかし、子どもの頃から歌を歌うことは好きで諦めきれず、27歳のときにボイストレーニングに通い始めた。
「先天性難聴で歌手として活動している方を自分の周りでは聞いたことがなかったので、可能性を感じたのと同時に、『自分が歌うことで誰かの背中を押せるのではないのか?』とも思い、歌に挑戦することを決めました」と振り返る。
2022年からボイストレーニングに通い始め、2025年6月に1stシングル『タカラモノ』、2026年2月に2ndシングル『DEAF is FIRE』をリリース。ファンからは「感動した」「自分も頑張ろうと思えた」「これからも応援します」などの温かい言葉をたくさんいただいたという。「工夫をすれば先天性難聴でもできるということを伝えたいです。時間はかかってもいいので、自分の一度きりの人生を謳歌してほしいです」と語る。
テレビ出演と大規模ステージへの夢
今後の挑戦として、「挑戦したいことはテレビ出演です。テレビの影響はとても大きいですし、僕もテレビに影響された側です。先天性難聴である僕の活動をひとりでも多くの方に知ってもらい、勇気や希望、感動を与えられたらと思っています」と話す。そして「『24時間テレビ』(日本テレビ系)にいつか出演したいです。実は、毎週のようにCDとお手紙をレターパックプラスでテレビ局に送りましたが、未だに連絡をいただいていないです。それでも諦めずに頑張ります」と明かす。
大規模ステージにも立ちたいと考えている。昨夏には初めて手話での演技舞台を経験し、稽古からとても緊張したが、「歌やダンスだけでなく幅広く挑戦していきたい」と考えるようになった。目標は、ずっとファンである三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの岩田剛典さんのようなカッコいいアーティストになることだと語った。



