米中摩擦で半導体受託生産の受注増、日本企業に追い風
米中摩擦で半導体受託生産の受注増、日本企業に追い風

米中対立の長期化に伴い、半導体業界で地殻変動が起きている。特に、半導体の受託生産(ファウンドリー)市場では、従来台湾積体電路製造(TSMC)に集中していた顧客が、地理的リスク分散を目的に日本企業へ発注をシフトする動きが顕著だ。この動きは、日本の半導体受託生産企業にとって大きな追い風となっている。

TSMC依存からの脱却

米中摩擦が激化する以前から、半導体の設計・製造分離(ファブレス・ファウンドリー)モデルが普及し、TSMCは世界の先端半導体の大半を製造するまでに成長した。しかし、台湾をめぐる地政学的リスクが高まるにつれ、米国や欧州の大手半導体企業は、供給源の多元化を迫られている。特に、軍事やインフラ向けの重要半導体については、台湾一極集中のリスクが認識され、日本国内での生産能力拡大が急務となっている。

日本企業の受注増加

こうした流れを受け、日本の半導体受託生産企業には問い合わせが急増している。例えば、ルネサス エレクトロニクスは、車載用半導体や産業機器向けの受託生産で、新規顧客からの引き合いが増加。同社は既存の工場の生産能力を増強するとともに、新たな製造ラインの設置を検討している。ソニーセミコンダクタソリューションズも、イメージセンサー以外の汎用半導体の受託生産を強化。2024年度には、受託生産の売上高が前年比20%増加する見通しだ。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

設備投資と技術課題

ただし、日本企業がTSMCの牙城を崩すには、いくつかの課題がある。第一に、先端プロセス(7ナノメートル以下)の量産技術である。日本勢は現在、40ナノメートル以上の成熟プロセスが中心で、先端ロジック半導体の受託生産は困難だ。第二に、設備投資額の大きさだ。先端工場の建設には数兆円規模の投資が必要で、単独で負担するのは難しい。政府の補助金や、顧客企業との協業が不可欠となっている。

政府の支援策

日本政府も、半導体の国内回帰を後押ししている。経済産業省は、2023年度補正予算で半導体関連に約1.3兆円を計上。特に、受託生産能力の増強に対しては、補助金や税制優遇措置を講じている。さらに、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(Rapidus)への支援も拡大。2025年の試作ライン稼働、2027年の量産開始を目標に、官民一体で取り組んでいる。

市場の反応と今後の展望

株式市場では、半導体受託生産関連銘柄への期待が高まっている。ルネサス エレクトロニクスの株価は、2024年に入ってから約15%上昇。アナリストからは「地政学リスクを背景に、中長期的な成長が見込める」との声が上がる。一方で、TSMCの優位性は依然として揺るがず、日本企業がシェアを大きく拡大するには時間がかかるとの見方も多い。

半導体業界に詳しいアナリストは「日本企業は、まずは車載や産業機器など、高信頼性が求められる分野で差別化を図るべきだ。先端プロセスへの過度な投資は避け、得意分野での受注拡大を目指すのが現実的」と指摘する。米中摩擦が長期化する中で、日本の半導体受託生産企業にとっては、千載一遇のチャンスと言えるだろう。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ