台湾積体電路製造(TSMC)は、半導体の受託生産(ファウンドリ)市場において、2024年第1四半期の世界シェアが約62%に達し、過去最高を記録した。同社は先端プロセス技術で競合を引き離し、AppleやNVIDIAなどの大手顧客からの受注を拡大している。
売上高と利益の急成長
TSMCの2024年上半期の売上高は前年同期比で約30%増加し、過去最高を更新した。特に3ナノメートルプロセスが貢献し、第2四半期の売上高は前年同期比で40%増となった。純利益も同様に拡大し、営業利益率は約42%に達している。
同社の成長を牽引するのは、AI関連半導体の需要拡大だ。NVIDIAのGPUやAppleのA17プロセッサなど、先端チップの生産がTSMCに集中している。市場調査会社のIC Insightsによれば、2024年のファウンドリ市場全体の成長率は約20%と予測され、TSMCはその恩恵を最大限に受けている。
地政学的リスクと分散戦略
しかし、TSMCは地政学的リスクに直面している。台湾をめぐる中国の軍事圧力が高まる中、同社は生産拠点の分散を進めている。米国アリゾナ州の工場は2024年に量産開始予定で、日本熊本県の工場も2024年後半に稼働を開始する。ドイツ・ドレスデンにも新工場を建設中だ。
TSMCの経営陣は「海外拠点の拡大は顧客の要望に応えるためであり、技術流出のリスクは最小限に抑えられる」と説明している。しかし、海外工場の建設コストは台湾よりも30~50%高く、利益率の低下が懸念されている。
競合他社との差別化
競合のサムスン電子やインテルも受託生産市場に参入しているが、TSMCの優位は揺るがない。サムスンは3ナノメートルプロセスで歩留まりに課題を抱え、インテルはファウンドリ事業の立ち上げに遅れが見られる。TSMCは2025年に2ナノメートルプロセスの量産を計画しており、技術リーダーシップを維持する方針だ。
業界アナリストは「TSMCの技術力と顧客基盤は当面、競合が追いつけないレベルにある。しかし、地政学的リスクとコスト増が長期的な成長の制約になる可能性がある」と指摘する。
今後の展望
TSMCは2024年の設備投資を300億ドル以上と計画し、先端技術と生産能力の拡大に注力する。また、欧州や日本の政府からの補助金も活用し、海外展開を加速させる。同社の成功は半導体業界全体の動向を左右し、今後の技術革新とサプライチェーンの再編に大きな影響を与えるだろう。



