水素エンジン車の実力と課題、トヨタが挑む新たな挑戦
水素エンジン車の実力と課題、トヨタの挑戦

トヨタ自動車は水素を燃料とするエンジン車の開発を加速している。同社はカーボンニュートラル(CN)実現に向け、電気自動車(EV)だけでなく、水素エンジン車も重要な選択肢と位置づけている。水素エンジンは従来のガソリンエンジンをベースに、燃料を水素に変えることで、ほぼCO2を排出しない。さらに、エンジン音や振動といった内燃機関ならではの魅力も残せる。

水素エンジンの仕組みとメリット

水素エンジンは、水素を燃焼させてピストンを動かす仕組み。ガソリンエンジンと同様の機構を流用できるため、開発コストを抑えられる。また、水素は燃焼速度が速く、熱効率が高い。トヨタは2021年から、カローラスポーツをベースにした水素エンジン車でレースに参戦し、技術を磨いてきた。

水素エンジンの最大のメリットは、既存のエンジン技術や生産設備を活用できる点だ。サプライチェーン全体でのCN移行をスムーズにする。さらに、水素はEV用バッテリーに比べてエネルギー密度が高く、長距離走行や重量車両に適している。

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残る課題と今後の展望

一方で、水素エンジンにはいくつかの課題がある。まず、水素の製造・貯蔵・供給インフラが未整備だ。現在、日本国内の水素ステーションは約160か所と限られている。また、水素を液化・圧縮する際のエネルギー損失や、コスト高も問題だ。

トヨタは、これらの課題を克服するため、水素エンジン車の量産化に向けた技術開発を進めている。同社は2023年10月、水素エンジン車の市販化を検討していると発表。2024年には、水素エンジンを搭載したプロトタイプ車両を公開した。

水素エンジン車の競争力

水素エンジン車は、EVと比較して航続距離や燃料補給時間で優位性を持つ。例えば、トヨタの水素エンジン車は、満タンで約600km走行可能で、水素補給は約3分で完了する。これは、EVの充電時間(急速充電でも30分程度)に比べて大幅に短い。

しかし、EVは充電インフラの整備が進んでおり、水素エンジン車はインフラ面で劣る。また、水素の価格はガソリンや電気に比べて高い。トヨタは、水素の製造コスト低減や、水素ステーションの整備促進を政府に働きかけている。

トヨタの豊田章男会長は「エンジン車を否定するのではなく、多様な選択肢を提供することが重要だ」と述べている。同社は、EV、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、水素エンジン車、燃料電池車(FCV)のマルチパスウェイ戦略を掲げている。

水素エンジン車の市場展望

水素エンジン車の市場は、まだ黎明期にある。2023年の世界の水素車販売台数は約1万5000台と、EVの約1000万台に比べて圧倒的に少ない。しかし、商用車や大型車両では、水素エンジンの需要が高まる可能性がある。

トヨタは、2025年までに水素エンジン車の生産体制を確立し、2030年には年間10万台の販売を目指す。さらに、水素エンジンを搭載したトラックやバスなどの商用車も開発中だ。

水素エンジン車の普及には、政府の支援も欠かせない。日本政府は、水素基本戦略で、水素供給量を2030年に300万トン、2040年に1200万トンに増やす目標を掲げている。また、水素ステーションの整備にも補助金を出している。

競合他社の動向

他社も水素エンジンの開発に取り組んでいる。日産自動車は、水素エンジンの研究を行っているが、市販化の計画は未定。また、マツダはロータリーエンジンを水素で動かす技術を開発したが、量産には至っていない。

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一方、海外では、中国の自動車メーカーや欧州の商用車メーカーが水素エンジンの開発を進めている。特に、中国は水素ステーションの整備に積極的で、2025年までに1000か所を建設する計画だ。

水素エンジン車は、カーボンニュートラル実現のための一つの解として、今後も注目を集めるだろう。トヨタの取り組みが、水素社会の実現にどのような影響を与えるか、引き続き注視する必要がある。