トヨタ自動車とNTTは、自動運転技術に特化したAI半導体の共同開発で合意した。両社は2028年までに実用化を目指し、新会社を設立して開発を推進する。この協業は、自動運転の高度化に不可欠なエッジコンピューティング処理を高速化し、消費電力を抑えることを目的としている。
自動運転向けAI半導体の開発背景
自動運転技術では、車載カメラやセンサーから得られる膨大なデータをリアルタイムで処理する必要がある。従来の汎用半導体では性能や消費電力の面で限界があり、専用のAI半導体が求められていた。トヨタとNTTは、それぞれの強みを活かし、自動運転に最適化されたチップを開発する。
NTTは、独自の光電融合技術「IOWN」を活用し、低消費電力で高速処理が可能な半導体技術を持つ。一方、トヨタは車載システムの開発で培ったノウハウを提供し、実車への搭載を前提とした設計を行う。両社は、2025年までに試作品を完成させ、2028年の量産開始を目標に掲げている。
新会社の設立と事業計画
両社は、共同出資で新会社を設立する。出資比率は非公表だが、トヨタが過半数を握るとみられる。新会社は、半導体の設計から製造までを一貫して手がけるわけではなく、設計に特化し、製造は外部ファウンドリーに委託する計画だ。
開発するAI半導体は、自動運転レベル4以上のシステムへの搭載を想定。レベル4は特定条件下での完全自動運転を指し、高度な演算能力が要求される。トヨタは、この半導体を自社の次世代EVにも搭載する方針で、2026年に投入予定の「bZ4X」の後継モデルなどへの採用を検討している。
業界への影響と今後の展望
自動運転用AI半導体市場は、米エヌビディアやインテル、クアルコムなどが先行する。トヨタとNTTの協業は、日本勢の巻き返しの起爆剤となる可能性がある。特に、NTTのIOWN技術は、従来の半導体に比べて消費電力を1/100に抑えるとされ、競争力の源泉になり得る。
トヨタの佐藤恒治社長は「自動運転の実現には、ソフトウェアとハードウェアの統合が不可欠だ。NTTとの協業で、世界最高水準の半導体を開発し、安全で快適なモビリティ社会を実現したい」とコメントしている。一方、NTTの島田明社長は「IOWNの技術を自動車分野に展開することで、社会課題の解決に貢献できる。トヨタとの協業は、その第一歩だ」と述べた。
協業の課題と競争環境
自動運転半導体の開発には、巨額の投資と長い開発期間が必要だ。トヨタとNTTは、総額で数千億円規模の投資を見込む。また、半導体の製造能力確保も課題で、台湾TSMCや米インテルなどのファウンドリーとの連携が不可欠となる。
競合他社も動きを見せる。ホンダは、米半導体企業のエヌビディアと提携し、自動運転システムを開発中。日産自動車も、自社開発の半導体を2025年までに搭載する計画を公表している。日本の自動車メーカー間での半導体開発競争が激化しそうだ。
トヨタとNTTの協業は、自動運転技術の普及を加速させる可能性がある。しかし、技術的なハードルに加え、法規制や社会受容性などの課題も残る。両社は、2028年の実用化を目指し、開発を急ぐ方針だ。



