日本の半導体産業がかつての輝きを取り戻すべく、官民挙げての取り組みが本格化している。政府は2023年、半導体・デジタル産業戦略を策定し、2030年までに国内半導体関連売上高を15兆円に引き上げる目標を掲げた。これは2020年の約5兆円から3倍に拡大する計画だ。
ラピダスが切り拓く最先端半導体の道
象徴的なプロジェクトが、先端半導体の国産化を目指すラピダスだ。同社は2027年の量産開始を目標に、北海道千歳市に工場を建設中。2ナノメートル世代のロジック半導体を製造し、世界の最先端を追う。政府はラピダスに対し、累計で約9,200億円の支援を決定。経済産業省の担当官は「これは国家的プロジェクトであり、日本の産業競争力の根幹に関わる」と強調する。
TSMCの熊本進出がもたらす波及効果
一方、台湾のTSMCは熊本県菊陽町に第1工場を建設し、2024年末に量産を開始予定。さらに第2工場の建設計画も発表され、総投資額は約2兆円に上る。これにより、関連する素材・装置メーカーの九州への集積が加速。九州経済産業局の調査によれば、2022年から2031年までの経済波及効果は約10.4兆円に達すると試算されている。
自動車向け半導体の安定供給へ
自動車業界も半導体の安定調達に動く。トヨタ自動車はデンソーと共同で、半導体設計会社「ミライズ・テクノロジーズ」を設立。2030年までに車載半導体の開発体制を強化する。ルネサスエレクトロニクスも、車載向けマイコンの生産能力を2025年までに2021年比で50%増強する計画だ。
人材不足という深刻な課題
しかし、課題も山積する。最大の難関は人材不足だ。半導体業界では、2030年までに約4万人の技術者不足が見込まれている。東京工業大学の教授は「大学の半導体教育はここ20年で弱体化した。産学連携で実践的な人材育成を急ぐ必要がある」と指摘する。政府は2024年度から、半導体関連の大学院教育を拡充し、年間1,000人の専門人材育成を目指す方針だ。
国際連携と安全保障の視点
半導体戦略は経済安全保障の色合いも強まっている。日本は米国、オランダなどと連携し、中国への先端半導体製造装置の輸出規制を強化。国内では、半導体の安定供給を確保するため、備蓄制度の導入も検討されている。経済産業省の審議官は「半導体はデジタル社会の基盤であり、その安定確保は国家安全保障にも直結する」と述べている。
日本の半導体産業復活への道のりは、まだ始まったばかりだ。官民の連携、人材育成、国際協調という三つの柱をいかにバランスよく進めるかが、成功の鍵を握る。



