半導体受託製造の新興企業が描く TSMC 超えの野望と現実
半導体受託製造の新興企業が描くTSMC超えの野望と現実

半導体受託製造(ファウンドリ)市場で、新興企業が既存大手の台湾積体電路製造(TSMC)を追撃する野心的な計画を打ち出している。同社は従来の微細化プロセスとは一線を画す独自技術を武器に、2020年代後半にも最先端半導体の量産を開始する方針だ。

独自のナノシート技術で差別化

この新興企業が開発するのは、ナノシート(Nanosheet)構造を採用したトランジスタ技術。従来のFinFET(フィンフェット)に代わり、さらなる微細化と省電力化を実現するという。同社のCEOは「当社の技術は理論上、TSMCの2ナノメートル世代を凌駕する性能を発揮できる」と述べ、業界の常識を覆す可能性を示唆した。実際、同社は2023年に試作品で1.5ナノメートル相当のトランジスタ動作を確認したと発表している。

量産化への課題と現実

しかし、半導体業界では技術の優位性だけでは成功は約束されない。新興企業が直面する最大の壁は、量産実績の不足と顧客基盤の脆弱さだ。ある半導体アナリストは「TSMCは年間数百億ドルを投資し、数十年にわたる歩留まり改善のノウハウを持つ。新興企業が短期間でこれを凌駕するのは極めて困難」と指摘する。また、最先端プロセスを採用する顧客(AppleやNVIDIAなど)は、サプライチェーンの安定性を重視するため、実績のない企業に容易に切り替えるとは考えにくい。同社は「2027年までに量産ラインを稼働させ、2028年には売上高10億ドルを目指す」と発表しているが、これはTSMCの2023年売上高(約700億ドル)の1.4%に過ぎず、市場へのインパクトは限定的とみられる。

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政府支援と地政学的リスク

新興企業の計画には、各国政府の半導体自給政策も追い風となっている。同社は本社を米国に置き、米国政府から20億ドル超の補助金を受ける見通しだ。また、日本や欧州連合(EU)も同社の技術に注目し、共同研究の打診があるという。一方で、地政学的リスクも無視できない。TSMCが台湾に集中していることへの懸念から、新興企業の米国拠点は「代替サプライヤー」としての価値を高める可能性がある。しかし、半導体製造装置の輸出規制や、人材獲得競争の激化が計画の遅延要因となる恐れもある。

業界再編の可能性

半導体ファウンドリ市場は現在、TSMC、サムスン電子、インテルの3社が寡占状態にある。新興企業の参入は、競争を促進し技術革新を加速させる可能性がある。特に、AI(人工知能)向け半導体の需要急増を背景に、高性能かつ低コストの製造技術へのニーズは高まっている。同社の技術が実用化されれば、自動運転やデータセンター分野で新たな応用が広がるかもしれない。ただし、半導体業界は巨額の投資と長期的な視野が必要なビジネスであり、新興企業が生き残るためには、技術的なブレークスルーだけでなく、戦略的なパートナーシップの構築が不可欠となる。

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