日本政府とトヨタ自動車、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、デンソーの8社が出資する新会社「Rapidus(ラピダス)」が、2022年11月に設立された。同社は、2030年までに最先端の半導体を国産化することを目指し、2027年には2ナノメートル(nm)世代の半導体を量産する工場の稼働を計画している。
官民総力戦で半導体復活へ
半導体は、デジタル社会の基盤であり、経済安全保障上の重要技術として位置づけられている。日本はかつて世界の半導体市場を席巻したが、現在はシェアを大幅に低下させている。政府は、先端半導体の製造技術を確立し、国内での生産基盤を強化するため、官民連携でRapidusを立ち上げた。
経済産業省は、同社に対し最大700億円の補助金を交付する方針を示している。さらに、北海道千歳市に建設予定の工場には、総額1兆円を超える投資が必要と見込まれている。政府は、2023年度補正予算に半導体関連の予算を計上し、支援を強化している。
Rapidusの社長に就任した小池淳義氏は、「日本の半導体産業の復活は、国家プロジェクトだ。世界トップレベルの技術を集結し、2nm世代の量産を実現する」と述べ、強い決意を示した。
2ナノメートル世代の技術革新
現在、最先端の半導体は、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子が量産する5nm世代が主流だ。2nm世代は、その次の世代に当たり、性能と消費電力の面で大幅な改善が見込まれる。Rapidusは、米IBMやベルギーの研究機関imecと協力し、技術開発を進める。
特に、Rapidusは、従来の微細化技術に加え、GAA(Gate-All-Around)構造と呼ばれる新しいトランジスタ構造を採用する予定だ。これにより、さらなる高性能化と低消費電力化を実現する。量産工場では、最先端の製造装置や材料を活用し、歩留まりの向上を図る。
半導体業界では、2nm世代の量産は、2025年以降にTSMCやサムスンが開始するとみられている。Rapidusは、2027年の量産開始を目標に、これらの競合に追い付くことを目指す。
経済安全保障と産業競争力
半導体は、軍事技術やAI、量子コンピュータなどの先端技術にも不可欠であり、各国が自国での生産を強化する動きを見せている。米国はCHIPS法を制定し、半導体製造に巨額の補助金を投じる。欧州連合(EU)も同様の政策を打ち出している。
日本は、2021年に半導体戦略を策定し、国内での半導体生産基盤の強化を掲げた。Rapidusの設立は、その一環だ。また、台湾有事などの地政学的リスクを考慮し、半導体の安定供給を確保する狙いもある。
専門家は、Rapidusの成功には、人材確保や技術開発のスピード、資金調達など多くの課題があると指摘する。しかし、半導体の国産化は、日本の産業競争力と経済安全保障にとって極めて重要であり、官民一体となった取り組みが求められている。



