電気自動車(EV)の世界的な普及加速により、車載半導体の需要が急増している。従来のガソリン車に比べ、EVには約2倍の半導体が搭載されるとされ、その数は1台あたり最大で1万個以上にも及ぶ。この需要増に対応するため、半導体メーカー各社は増産体制を強化しているが、供給不足は依然として深刻だ。
日本企業の現状と課題
日本はかつて半導体産業で世界をリードしていたが、現在はシェアを大幅に低下させている。特に、先端ロジック半導体の分野では、台湾や韓国、米国の企業に大きく後れを取っている。一方で、車載半導体の分野では、ルネサス エレクトロニクスやソニーグループなど、日本企業が強みを持つ領域も存在する。
経済産業省は、国内半導体産業の復活を目指し、2021年度補正予算で約7740億円の半導体関連予算を計上。さらに、2022年度からは、先端半導体の研究開発や製造基盤の強化に向けた支援を拡大している。経産省の担当者は「半導体は経済安全保障の観点からも極めて重要であり、官民一体となって取り組む必要がある」と強調する。
EV向け半導体の需要特性
EV向け半導体には、パワー半導体やマイコン、センサーなど多様な種類が求められる。特に、パワー半導体は電力変換効率に直結するため、EVの航続距離や性能を左右する重要な部品だ。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった次世代材料を用いたパワー半導体の開発競争も激化している。
また、自動運転技術の進化に伴い、センサーや画像処理半導体の需要も拡大。車載カメラやLiDAR(光検出と測距)などのセンサーから得られるデータを処理するため、高性能な半導体が不可欠となっている。
供給網の見直しと投資動向
世界的な半導体不足を受け、自動車メーカーはサプライチェーンの見直しを迫られている。従来のジャストインタイム方式から、在庫を積み増す方向にシフトしつつある。また、半導体メーカーとの直接契約や、自社での半導体設計・開発を進める動きも出てきている。
米国や欧州、中国など各国政府も、半導体の国内生産強化に向けた補助金制度を打ち出している。日本でも、TSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場への補助金拠出が決定され、国内半導体産業の活性化が期待されている。
今後の展望と日本企業の戦略
半導体需要は今後も拡大が見込まれ、2030年には世界市場が現在の約2倍になるという予測もある。日本企業が競争力を維持・強化するためには、技術開発への積極的な投資と、産学官連携による人材育成が不可欠だ。
経産省は、次世代半導体の研究開発を推進する「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立し、2025年までに先端半導体の試作ラインを整備する計画だ。さらに、2023年度中には、半導体関連の新たな補助金制度を創設する方針で、国内企業の設備投資を後押しする。
日本企業も、ルネサスが車載半導体の増産投資を発表するなど、積極的な動きを見せている。しかし、国際競争は激化しており、持続的な成長には、長期的な視点に立った戦略と、政府の継続的な支援が求められる。



