世界最大のEV用電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、深刻な在庫過剰に直面している。2024年第1四半期の在庫回転率は0.8倍と過去最低を記録し、EV販売の急減速が電池需要を直撃している。同社は生産調整を余儀なくされ、業界全体に波及効果が及んでいる。
需要減速と在庫急増の背景
中国のEV補助金縮小や市場飽和により、2024年上半期のEV販売台数は前年同期比でわずか3%増にとどまった。これに伴い、CATLの在庫は2023年末比で約25%増加し、過去最高の水準に達した。同社の2024年第1四半期の売上高は前年同期比で10%減の約800億元、純利益は同15%減の約100億元に落ち込んだ。
CATLの広報担当者は「需要変動に対応するため、生産ラインの稼働率を調整している。在庫管理を強化し、コスト削減に努める」とコメントしている。しかし、業界アナリストは「在庫回転率の低下は価格競争の激化を招き、収益性をさらに圧迫する」と警告する。
価格競争と収益悪化
CATLは2024年初頭から電池価格を最大20%引き下げたが、販売量の増加にはつながっていない。競合の比亜迪(BYD)や韓国のLGエナジーソリューションも値下げに追随しており、業界全体の利益率が低下している。CATLの2024年第1四半期の営業利益率は8.2%と、前年同期の11.5%から3.3ポイント低下した。
一方で、原材料価格の下落が在庫評価損を拡大させている。リチウム価格は2023年の高値から約60%下落し、CATLは2024年第1四半期に約50億元の在庫評価損を計上したとみられる。同社は2023年に過去最高の純利益441億元を記録したが、2024年は大幅な減益が予想される。
生産調整と新技術へのシフト
CATLは2024年4月、福建省寧徳市の主力工場で生産ラインの一部を停止し、稼働率を70%に引き下げた。同社は年内に生産能力の10%削減を計画している。また、新たな成長分野として、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の次世代品や、ナトリウムイオン電池の量産化に注力する。
CATLの創業者で会長の曾毓群氏は、2024年5月の株主総会で「短期的な需要変動に左右されず、長期的な技術開発を継続する。2025年には新型電池の生産を開始し、競争力を強化する」と述べた。同社は研究開発費を2024年に前年比20%増の約200億元に拡大する方針だ。
業界への影響と今後の見通し
CATLの在庫問題は、中国のEVバリューチェーン全体に波及している。部品メーカーや鉱山会社も生産調整を迫られ、業界再編の動きが加速している。中国政府は2024年6月、EV購入補助金の再導入を検討しているが、効果は不透明だ。
市場調査会社SNEリサーチによると、2024年の世界のEV用電池需要は前年比15%増の約950GWhと予測されるが、供給能力は1200GWhを超え、過剰供給が続く見通し。CATLの市場シェアは依然として世界首位の37%を維持しているが、在庫調整の成否が今後の業績を左右する。



