世界的な電気自動車(EV)販売の減速を受け、中国の電池最大手であるContemporary Amperex Technology(CATL)が戦略の大きな転換を迫られている。同社はこれまで、EV向け電池の大量生産と低価格化で市場を席巻してきたが、需要の伸び悩みにより、新たな成長戦略として航続距離1000キロメートル超の新型電池の投入を計画している。
販売減速がもたらした構造変化
CATLの2023年の世界シェアは約37%と圧倒的だが、2024年に入りEV販売の伸びが鈍化。中国市場では補助金縮小や消費者の購買意欲低下が影響し、EV販売台数の伸び率が前年比で20%未満に低下した。これにより、CATLの2024年第1四半期の純利益は前年同期比で約10%減少したと報じられている。
こうした状況を受け、同社は従来の大量生産・低価格戦略から、高付加価値製品へのシフトを余儀なくされている。CATLの広報担当者は「市場環境の変化に対応し、より高性能な電池の開発に注力する」とコメントしている。
航続距離1000km超の新型電池
新型電池は、エネルギー密度を大幅に向上させ、航続距離1000キロメートル以上を実現するとされる。これは現在の主流であるリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)の約2倍のエネルギー密度に相当する。具体的には、同社が開発中の「凝集状態電池(Condensed Battery)」技術を採用。これは電解質を固体に近い状態にすることで、エネルギー密度を高めるものだ。
CATLはこの新型電池を2024年後半に量産開始し、まずは高級EV向けに供給する計画。さらに、2025年までにコストを現在のLFP電池と同等レベルに引き下げる目標を掲げている。
競争激化と技術覇権争い
CATLの戦略転換の背景には、競合他社の台頭もある。韓国のLGエナジーソリューションやサムスンSDI、日本のパナソニックなどが、高エネルギー密度の次世代電池開発で追い上げている。特に、全固体電池の実用化に向けた競争が激化しており、トヨタ自動車が2027年ごろの実用化を目指すなど、技術覇権争いが活発化している。
また、中国国内でも、BYD傘下の弗迪電池(FinDreams Battery)や、新興の寧徳時代新能源科技(Ningde Times)などが低価格路線で攻勢を強めており、CATLのシェアは徐々に侵食されつつある。
今後の展望と課題
CATLの新型電池は、EV市場の活性化につながる可能性がある。しかし、量産技術の確立や安全性の確保、充電インフラの整備など、解決すべき課題も多い。特に、高エネルギー密度電池は発熱や劣化のリスクが高く、耐久性の検証が不可欠だ。
業界アナリストは「CATLが航続距離1000kmの電池を実現すれば、EVの普及に弾みがつく。しかし、技術的なハードルは高く、競争も激しい。今後の動向が注目される」と指摘する。
CATLの戦略転換は、EV市場全体の行方を左右する可能性がある。同社が新たな技術革新で再び主導権を握れるか、今後の展開が注目される。



