電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品大手のデンソーが半導体の内製化に本格的に乗り出す。同社は2025年までに自社設計の半導体を量産開始する計画で、これにより車載システムの高性能化と半導体の安定調達を実現する狙いだ。
半導体不足が契機、内製化の必要性高まる
世界的な半導体不足は自動車業界に深刻な影響を与え、多くのメーカーが生産調整を余儀なくされた。この経験から、デンソーは半導体の内製化の重要性を痛感。同社の担当者は「外部調達に依存するリスクを低減し、技術競争力を高めるためには、自社で半導体を設計・生産する体制が不可欠だ」と語る。
デンソーはこれまでも車載用半導体を開発してきたが、多くは外部ファウンドリに委託していた。今回の計画では、自社設計の半導体を自社工場で生産するラインを新設。まずはパワー半導体やセンサー類を手掛け、EVの中核部品であるインバーターやバッテリー管理システムに搭載する。
2025年量産開始、EV向けに特化
同社は2025年を目標に、自社設計の半導体の量産を開始する。初期投資は数百億円規模と見込まれ、愛知県内の工場に生産ラインを設置する。生産する半導体は、EVの電費性能を左右するパワー半導体や、高度な制御を必要とするセンサー類が中心となる。
デンソーの半導体内製化は、自動車業界のトレンドを先取りする動きだ。従来、自動車メーカーや部品メーカーは半導体を専門メーカーから調達するのが一般的だったが、EVシフトに伴い、車載半導体の需要は急増。加えて、自動運転やコネクテッド技術の進展により、半導体の役割はますます重要になっている。
業界アナリストは「デンソーの内製化は、サプライチェーンの強化だけでなく、車載システムの差別化にもつながる。特にEVでは、半導体の性能が航続距離や充電速度に直結するため、内製化は大きな競争優位をもたらす」と指摘する。
他社も追随、半導体内製化の波
デンソー以外にも、トヨタ自動車や日産自動車などが半導体内製化を進めている。トヨタはデンソーと共同で半導体開発会社を設立し、次世代車載半導体の開発を加速。日産もルノーと連携し、自社設計の半導体を2026年までに搭載する計画を明らかにしている。
半導体内製化の動きは、自動車業界全体に広がりつつある。背景には、半導体の技術進歩が速く、外部調達では最新技術を迅速に取り入れにくいという課題がある。また、半導体のカスタマイズが可能になり、車両ごとに最適化された制御が実現できるメリットも大きい。
一方で、内製化には巨額の投資と高度な技術力が必要であり、全ての自動車メーカーや部品メーカーが追随できるわけではない。専門家は「内製化できる企業とそうでない企業の二極化が進むだろう。半導体の内製化は、今後の自動車業界の競争力を左右する重要な要素になる」と分析する。
今後の展望:EV普及と半導体需要の拡大
デンソーの半導体内製化計画は、EV普及の加速と半導体需要の拡大を見据えた戦略だ。国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、2030年までに世界のEV販売台数は現在の10倍以上に増加し、それに伴い車載半導体の需要も急拡大する見通し。
デンソーは今回の内製化を通じて、EV向け半導体の安定供給を確保するとともに、車載システムのさらなる高性能化を目指す。同社は「半導体内製化により、EVの航続距離延長や充電時間短縮など、お客様に直接メリットを提供できる技術を開発していく」とコメントしている。



