ビル管理の「属人化」解消へ 東京建物が開設、新たな「基地」が持つ5つの機能
ビル管理の属人化解消へ 東京建物が新基地開設

ビルメンテナンス業界の在り方が大きく変わろうとしている。慢性的な人手不足に加え、長年の課題である「ワンマン管理による属人化」の影響で、ノウハウの継承や若手育成が危ぶまれているのだ。

全国ビルメンテナンス協会の調査によると、ビル管理事業者の88.5%が「現場従業員が集まりにくい」と回答し、人手不足を認識していた。また「現場従業員の確保が難しい」(74.1%)といった声も挙がっており、人材不足や高齢化が進む中、次世代を担う人材の育成やノウハウ継承が大きな課題となっている。

「点」から「面」への転換

さらに、物件の規模に応じた管理体制の難しさも問題となっている。一般的に、大規模物件の管理は20~30人規模の専門チームが担当する。電気、空調、給排水などを分業して管理しており、知見の共有や、組織全体でフォローし合える点がメリットだ。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

一方、中規模、小規模物件は1~5人程度、あるいは巡回で管理するため、1人の担当者が点検・清掃からトラブル対応、テナント対応まで全てを担う必要があった。その結果、属人化が進行し、担当者が休んだ際の対応に苦労するだけでなく、異動や退職のたびに後任者が一から知識を覚え直さなければならず、それまでのノウハウが流出してしまう悪循環に陥っていた。

「BASE YNK」に5つのシステム

こうした危機に対し、総合デベロッパー大手の東京建物と、同社のグループ会社でビル管理事業を手掛ける東京不動産管理(東京都品川区)がタッグを組み、抜本的な改革に乗り出した。DXを推し進めることで、物件ごとに担当者を配置し、各担当者がそれぞれの現場を専任で管理する従来のやり方を転換。複数の物件を一元的に統括・管理する「基地」を新たに設置した。

東京建物と東京不動産管理は東京・日本橋にビルメンテナンスセンター「BASE YNK」(ベース インク)を開設した。これまでの1棟ごと、つまり「点」の管理から、複数物件を横断してチームで支える「面」(エリア)の管理へと移行した。

複数の物件を横断して効率的に管理するために、BASE YNKには5つのシステムを導入した。

(1)ダッシュボード

担当物件で発生した警報に加え、設備状況、周辺の気象や地震情報をリアルタイムで一元表示する。

(2)3Dビューア

建物内部を3Dで立体表示。異常が発生したフロアや設備の位置が一目で分かるようにした。図面やマニュアル、過去の修繕履歴とも連動している。

(3)クラウドカメラ

現地の状況を遠隔からPCやスマホからリアルタイムで映像を確認できる。

(4)管理ロイド

点検、清掃、警備、不具合報告への対応記録はスマホアプリで管理する。AIによるメーター読み取り支援機能を提供しており、確認ミスを削減を見込む。

(5)ナレッジAI

ビル管理業務に特化したAIチャットボット。過去のトラブル履歴やベテランのノウハウを学習し、自然言語の質問に対し、約30秒で根拠付きの一次対応案や原因仮説を回答する。

ノウハウ継承と人材育成

これまで物件ごとや担当者ごとに蓄積され、一部は紙の記録に依存していた情報をデータベース化し、チーム全体で共有し活用できる環境を整備した。これにより、ベテラン人材が培ってきた知見や管理ノウハウの継承が可能となった。特にナレッジAIは、管理ロイドに蓄積された過去の膨大な不具合報告書や処理説明書を構造データ化しており、退職による知識流出を防ぐ仕組みとなっている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

東京建物の大西宏和氏(ビルマネジメント第一部長)は「ビルメンテナンス業務を一人前にこなせるようになるには3~5年かかるといわれてきた。BASE YNKでの一元管理により、若手が早期に成長でき、休みも取りやすい持続可能な職場環境を作る狙いもある」と説明する。

さらに「DXやAIの活用は、決して人を減らすためのものではない。積み重ねた経験とデータの力を組み合わせ、人がより力を発揮できるようにするための手段である」と強調した。

BASE YNKでは現在、4棟のビルを管理している。将来的には25人体制で40物件を管理することを目指す。日々の点検作業やトラブル対応の所要時間などのデータを蓄積。検証を進め、対象物件を段階的に拡大していく方針だ。