買い物客が自ら商品のバーコードを読み取るセルフレジで、万引き被害が目立っている。周囲の目の少なさに加え、「うっかりミス」と言い訳しやすい心理的ハードルの低さが一因とみられる。店側は抑止のため、防犯カメラの設置や従業員の配置で対応している。
セルフレジ万引きの手口と被害の実態
高知県を中心にスーパーマーケット19店舗を展開する「エースワン」(本社・高知市)では、レジの約7割にあたる137台がセルフレジだ。2025年には11件のセルフレジ万引きが摘発された。
ある店舗では昨春、40歳代の男がセルフレジで肉や魚、キャベツ、ネギを、バーコードを読み取らせないまま、次々と袋の中に入れていった。店側が発見して注意し、警察に引き渡した。男は「ばれないと思った」と話したという。
同社の筒井浩司総務部部長は「セルフレジは人手不足の解消や買い物客の利便性にもつながっているが、悪用はたまったものではない」と話した。
全国で8年ぶりに10万件突破、代表的な手口
警察庁によると、全国の万引きの認知件数は、25年に10万5135件。コロナ禍もあり一時減少していたが、8年ぶりに10万件を突破した。全国万引犯罪防止機構によると、被害額の推計は23年度で約3460億円にのぼる。
スーパーの業界団体によると、セルフレジが国内で初めて導入されたのは03年。その後、コロナ禍の感染対策で急速に普及が進み、人手不足や人件費高騰も重なった結果、25年時点で約4割の企業が利用していた。
同機構の24年の調査では、セルフレジの導入後、万引き被害が増加したと回答した企業は25%。従来の万引きが商品を隠して持ち去るのに対し、セルフレジ万引きは商品のバーコードを読み取る(スキャンする)ふりをするのが特徴だ。
同機構によると、代表的なのが「スキャン飛ばし」と呼ばれる手口で、カートに入れた商品の一部だけスキャンせず、そのまま袋に入れて持ち帰る。商品を二つ以上重ね、安価な商品だけをスキャンする手口もあり、「重ね打ち」と呼ばれる。
他にも、あらかじめ用意した別の安価な商品のバーコードを本来のバーコードの上に重ね、安く会計を済ませる「バーコード偽装」や、ショッピングカートの上段の商品だけをスキャンし、下段をそのまま持ち帰る「カート下の商品残し」という大胆な犯行もある。
万引きは窃盗罪で、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される。バーコードの貼り替えなどの手口は電子計算機使用詐欺罪に該当する可能性もあり、10年以下の拘禁刑が科される。
同機構の広報担当者は「セルフレジ万引きは、うっかりミスか故意なのかわかりにくい。誤って未精算のまま商品を持ち帰った人が、それを成功体験として万引きに手を染めるケースもある」と述べた。
防犯カメラやAIで抑止、専門家は「人の目」の重要性指摘
店側は対策を進めている。スーパーの業界団体の調査では25年、セルフレジを導入した企業の約8割がレジ付近に防犯カメラを設置。約5割が従業員を近くに配置していた。
人工知能(AI)も導入されている。大手電機メーカー・東芝テック(東京)は、商品がスキャンされずにレジを通過するとAIで検知し、店側に通知するシステムを昨年6月から発売している。
カメラ映像をAIで解析し、商品のスキャン漏れや未スキャンのまま袋詰めする動作をリアルタイムで検知する。現在、全国の約70店舗で運用されており、同社の企画担当者は「意図的な不正だけでなく、うっかりミスも防ぐことができる」と話した。
万引き対策に詳しい香川大の大久保智生教授(犯罪心理学)は「店側に万引きを指摘されても、『操作を間違えた』と正当化しやすいことがセルフレジ万引きの要因の一つだ。抑止には人の目が重要で、接客を通じて積極的に声がけをすることも大切だ」と指摘した。