トヨタ自動車と日産自動車の電気自動車(EV)戦略に明確な違いが表れている。トヨタは2025年までに10車種の新型EVを投入する計画を掲げる一方、日産は2026年度までに世界販売に占めるEV比率を40%に引き上げる目標を打ち出した。両社のアプローチは、技術開発から市場投入までのスピード感で対照的だ。
トヨタの全方位戦略
トヨタは2021年12月に、2030年までにEV向け投資として8兆円を投じると発表。2025年までに10車種の新型EVを投入し、2030年には全世界で年間350万台のEV販売を目指す。この戦略の特徴は、ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)を含む全方位での電動化推進にある。トヨタは「お客様の選択肢を広げる」として、地域やニーズに応じた多様なパワートレインを提供する方針だ。
具体的には、2022年に発売した「bZ4X」を皮切りに、SUVやセダンなど幅広い車種をラインナップ。2023年には中国市場向けに2車種のEVを投入するなど、地域ごとの需要に合わせた展開を進めている。トヨタの豊田章男社長は「EVシフトは顧客の選択肢の一つ」と述べ、市場の動向を見極めながら柔軟に対応する姿勢を示している。
日産のEV専業戦略
一方、日産はEVに特化した戦略を加速している。2010年に世界初の量産EV「リーフ」を発売したパイオニアとして、2021年に発表した長期ビジョン「ニッサン・アンビション2030」で、2026年度までにEV販売比率を40%に引き上げ、2030年には100%を目指すと明言した。日産の内田誠社長は「EVは日産の成長の柱」と強調する。
日産は2023年から2026年にかけて、20車種の新型EVを投入する計画。特に、2025年には低価格帯のEVを発売し、普及を促進する方針だ。また、独自の全固体電池技術を2028年までに実用化し、航続距離の向上とコスト削減を図る。日産は「EV専業メーカーとしてのブランド力を高める」としている。
戦略の違いが生む影響
両社の戦略の違いは、技術開発や生産体制にも影響を与えている。トヨタはEV向けの新プラットフォーム「e-TNGA」を開発し、複数車種での共用化を進める。一方、日産はリーフで培ったEV技術をベースに、専用プラットフォーム「CMF-EV」を採用し、効率的な生産を目指す。
市場関係者は「トヨタの全方位戦略はリスク分散に優れるが、EVシフトが加速した場合にスピード不足になる可能性がある。日産のEV特化戦略は先行者利益を得られるが、市場の変化に左右されやすい」と分析する。両社の戦略は、今後のEV市場の行方を占う上で重要な指標となる。
日本政府は2035年までに新車販売をすべて電動車にする目標を掲げており、トヨタと日産の動向は業界全体に大きな影響を与える。両社の戦略がどのような結果をもたらすか、今後の展開が注目される。



