トヨタ自動車と日産自動車の電気自動車(EV)戦略が、日本市場で対照的な展開を見せている。トヨタはハイブリッド車(HV)で培った技術を基盤に、段階的にEVシフトを進める戦略を採用。一方、日産は世界初の量産EV「リーフ」の成功を受け、EVへの全面転換を加速させている。
トヨタの戦略:マルチパスウェイと水素へのこだわり
トヨタは、EVだけでなくHVやプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)など複数の電動化技術を組み合わせる「マルチパスウェイ戦略」を掲げる。2023年にはEV販売台数が約10万4千台と、世界全体の販売の約1%に過ぎないが、2030年までにEVの年間販売を350万台に引き上げる目標を掲げている。トヨタの豊田章男会長は「お客様の選択肢を狭めるべきではない」と述べ、多様なパワートレインの重要性を強調している。
また、トヨタは水素エンジン車の開発にも注力。2023年には水素エンジンを搭載したカローラクロスをレースに投入し、技術検証を進めている。水素インフラの整備が進めば、EVと並ぶゼロエミッション車の選択肢になるとの見方だ。
日産の戦略:EVへの全面シフトとアライアンス活用
日産は、2010年に発売したリーフでEV市場を先駆け、2023年までに世界累計販売65万台を達成。2023年度のEV販売台数は約14万5千台で、日産全体の約7%を占める。日産は2030年までにEVとe-POWERを合わせた電動車比率を55%以上に引き上げ、新車販売の半分以上をEVにする目標を掲げる。
日産の内田誠社長は「EVはもはや特別な車ではなく、主力製品になる」と述べ、2026年までに新型EVを5車種投入する計画を発表。さらに、ルノー、三菱自動車とのアライアンスを活用し、共通プラットフォームの開発を進める。日産は2028年までに、全固体電池を搭載したEVを量産する計画も明らかにしている。
日本市場での競争激化と課題
日本市場では、EV販売が全体の約2%にとどまるが、両社の戦略の違いが鮮明になっている。トヨタはHVの強みを活かし、EVへの移行を緩やかに進める。2024年には新型EV「bZ4X」の改良版を投入し、航続距離の向上を図る。一方、日産はリーフの後継車種を含むEVラインアップを拡充し、価格競争力を高める方針だ。
両社の戦略の違いは、充電インフラの整備状況や政府の補助金政策にも影響される。日本政府は2035年までに新車販売をすべて電動車にする目標を掲げるが、急速充電器の設置数は欧州や中国に比べて少ない。トヨタは既存のHVユーザー向けに、充電インフラに依存しない選択肢を提供するメリットを強調。日産はEV専用の充電ネットワーク「日産ゼロ・エミッション・サポートプログラム」を拡大し、ユーザーの利便性向上を図る。
今後の展望と市場への影響
アナリストの間では、両社の戦略の違いが日本市場のEV普及率に影響を与えるとの見方が強い。トヨタの段階的アプローチは、インフラ未整備地域でのHV需要を取り込む一方、日産の積極的なEVシフトは、都市部でのEV需要を喚起する可能性がある。両社の競争は、結果的に消費者の選択肢を広げ、電動化の加速につながると期待される。



