電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品メーカーはかつてない変革を迫られている。内燃機関車からEVへのシフトにより、エンジンやトランスミッションなど従来の主要部品が不要になる一方、バッテリーやモーター、インバーターなど新たな部品需要が生まれている。この構造変化に対応できない部品メーカーは淘汰されかねないと、業界関係者は警鐘を鳴らす。
EVシフトがもたらす部品点数の減少と変化
EVはガソリン車に比べ、部品点数が約3分の1に減少すると言われる。エンジン、燃料タンク、排気系、トランスミッションなど約300点の部品が不要になる一方、バッテリー、モーター、インバーターなど約100点の新たな部品が必要となる。このため、従来の部品メーカーは、事業ポートフォリオの抜本的な見直しを迫られている。
日本自動車部品工業会の調査によれば、2025年までに国内部品メーカーの約3割がEV関連事業に本格参入すると予測される。しかし、現時点でEV向け部品の売上比率が10%を超える企業はまだ少ない。
生き残るための3つの条件
自動車産業アナリストの山田太郎氏(仮名)は、部品メーカーが生き残るための条件として、以下の3点を挙げる。
- 得意分野への特化:全ての部品を手掛けるのではなく、自社の強みを活かせる分野に集中する。例えば、精密加工技術を活かしたモーター部品や、樹脂成形技術を活かした軽量化部品など。
- EV向け部品の開発:EVに特化した新製品の開発が不可欠。バッテリーケースや冷却システム、パワーエレクトロニクス関連部品など、EVならではの需要を取り込む。
- グローバル展開:国内市場だけでは成長が望めない。中国や東南アジアなど、EV需要が拡大する市場への進出が重要。特に中国は世界最大のEV市場であり、現地での生産拠点確保が競争力の鍵を握る。
事例:成功する部品メーカーの戦略
実際に、これらの条件を満たしつつある部品メーカーも存在する。例えば、A社は従来エンジン部品を主力としていたが、早くからEV向けモーターコアの生産にシフト。現在ではEV向け売上比率が50%を超え、業績を伸ばしている。また、B社は軽量化樹脂部品で強みを持ち、EVバッテリーケースの受注に成功。海外工場の増設も進めている。
一方で、対応が遅れたC社は、主要取引先からの受注減少に直面し、工場閉鎖を余儀なくされた。このように、EVシフトは部品メーカーの明暗を分けつつある。
政府の支援と業界再編の可能性
経済産業省は、自動車部品産業の構造転換を支援するため、2023年度補正予算で約1000億円の基金を創設。EV向け部品の研究開発や設備投資に対する補助金を拡充している。また、業界再編を促す動きもあり、中小部品メーカーの統合や連携が進む可能性がある。
日本自動車部品工業会の理事は、「業界全体として、EVシフトは脅威ではなくチャンスと捉えるべき。変化を恐れず、積極的に新技術に投資する企業が勝ち残る」と述べている。
結論:適応こそが生き残りの鍵
EVシフトは不可逆的な流れであり、部品メーカーにとって待ったなしの経営課題である。得意分野への特化、EV向け部品開発、グローバル展開の3条件を満たし、迅速に適応できるかどうかが、今後の生存を左右する。自動車産業のサプライチェーン全体が再編される中、部品メーカー各社の戦略が注目される。



