リクシルは、電気自動車(EV)充電器事業に本格参入すると発表した。新会社「LIXIL EVパワー」を2024年4月に設立し、2030年までに売上高100億円を目指す。同社は、住宅設備大手としての強みを活かし、集合住宅や商業施設向けにEV充電器を提供する。
新会社の概要と事業計画
新会社「LIXIL EVパワー」は、リクシルが100%出資する子会社として設立される。資本金は1億円で、本社は東京都品川区に置く。代表取締役社長には、リクシルで新規事業開発を担当してきた山本卓也氏が就任する。同社は、2024年度中に日本、欧州、アジアで充電器の販売を開始する計画だ。
リクシルは、これまでに住宅用太陽光発電システムや蓄電池を販売してきた実績がある。EV充電器事業は、これらの再生可能エネルギー関連事業とのシナジー効果が期待される。同社は、2030年までに累計で10万台以上の充電器を販売し、売上高100億円を達成する目標を掲げる。
市場背景と競争環境
世界的にEVの普及が加速する中、充電インフラの整備が急務となっている。日本政府は、2030年までにEV充電器の設置目標を30万口に設定している。リクシルは、集合住宅向けの充電器市場に特に注力する。同社の調査によると、日本国内の集合住宅の約7割がEV充電器を設置していないという。
競合他社としては、パナソニックや東芝、日東工業などが挙げられる。また、海外ではテスラやABBなどが市場をリードしている。リクシルは、住宅設備の販売網を活用し、既存の顧客基盤にアプローチすることで差別化を図る。
製品ラインナップと技術的特徴
リクシルは、出力3kWから6kWの家庭用充電器と、出力50kW以上の急速充電器を提供する予定だ。家庭用充電器は、コンパクトでデザイン性に優れ、集合住宅の駐車場にも設置しやすい。急速充電器は、商業施設や高速道路のサービスエリアなどに向けたものだ。
同社の充電器は、通信機能を搭載し、遠隔での監視や課金が可能。また、太陽光発電や蓄電池と連携することで、再エネ由来の電力を優先的に使用するスマート充電にも対応する。リクシルは、2025年までにV2H(Vehicle to Home)機能にも対応する予定だ。
地域別の展開戦略
日本市場では、まず首都圏と関西圏の集合住宅向けに販売を開始する。リクシルは、全国に約1万の販売店ネットワークを持ち、これを活用して設置工事も含めたワンストップサービスを提供する。欧州市場では、ドイツとフランスを皮切りに、2025年までに5カ国に展開する。アジア市場では、タイとインドネシアで販売を開始し、現地の不動産デベロッパーと連携する。
リクシルの瀬戸欣哉社長は、「EV充電器は、当社の成長戦略の柱の一つだ。住宅設備の総合メーカーとして、エネルギー管理の分野でもリーダーシップを発揮したい」とコメントしている。
業績への影響と今後の見通し
リクシルは、2024年3月期の連結売上高が1兆4,000億円を見込む中、EV充電器事業は当初は売上高に占める割合は小さい。しかし、2030年までに同事業で100億円の売上高を達成すれば、全体の約0.7%に相当する。同社は、EV充電器事業を新たな収益源として育成し、中長期的な成長につなげたい考えだ。
アナリストからは、「リクシルは住宅設備の販売網とブランド力を持っており、EV充電器市場で一定のシェアを獲得できる可能性がある。ただし、競争が激しく、価格競争も予想されるため、差別化が鍵となる」との声が聞かれる。リクシルは、今後3年間で100億円を投資し、製品開発と販売網の拡大を進める方針だ。



