日本の電気自動車(EV)シフトにおいて、バッテリーの安定調達が最大の課題となっている。現在、世界のリチウムイオン電池生産の約7割を中国が占めており、日本企業はこの依存体質からの脱却を迫られている。経済産業省は2023年、蓄電池の国内生産能力を2030年までに現在の約10倍となる150GWhに引き上げる目標を掲げた。
中国依存のリスクと各国の動き
中国はリチウム、コバルト、ニッケルなどの主要鉱物の精製工程でも強みを持ち、バッテリーサプライチェーン全体を掌握している。米国はインフレ抑制法(IRA)で中国製部品を使用したEVを税優遇から除外し、欧州も重要原材料法で域内調達を促進。日本もこれに追随し、カナダやオーストラリアとの資源協力を強化している。
トヨタ自動車は2026年までに次世代電池の量産を計画し、日産自動車は英エンビジョンAESCと協業して国内電池工場を建設中。ホンダもソニーとの合弁会社ソニー・ホンダモビリティでEV向け電池調達を進める。しかし、電池セル価格は2022年に前年比7%上昇し、調達コストの増加が各社の収益を圧迫している。
国内電池生産体制の拡充
経産省は2022年、蓄電池産業戦略を策定し、官民で3.4兆円の投資を計画。2023年度補正予算では電池関連に約3,300億円を計上した。具体的には、パナソニックエネルギー社が和歌山県で円筒型リチウムイオン電池の新工場を稼働予定。また、東北地方では複数の素材メーカーが電極材の生産拡大を進めている。
同時に、日本はリサイクル技術の開発にも注力。住友金属鉱山は使用済み電池からニッケルやコバルトを回収する技術を実用化し、2030年までに回収率90%以上を目指す。これにより資源の循環利用を促進し、新規採掘への依存を減らす狙いだ。
資源外交と国際協力
日本政府は資源国との連携を強化。2023年、日加首脳会談で重要鉱物のサプライチェーン構築で合意。豪州とはリチウムの安定供給で協力覚書を締結。さらに、アフリカのコンゴ民主共和国ともコバルトの共同開発で協議中だ。これらの取り組みにより、2030年までに中国依存度を50%未満に低減する目標を掲げる。
専門家は「電池調達の多角化は国家安全保障にも直結する」と指摘。日本のEV普及率は2023年時点で新車販売の約2%と低水準だが、2035年までに全新車を電動車にする目標を掲げる。その実現には、電池の安定供給が不可欠となる。



