エンジン部品の需要減少と電動化対応の加速
世界的なEVシフトの波は、自動車部品産業に構造的な変革を迫っている。従来のエンジン車に不可欠だったエンジンやトランスミッション、排気系部品の需要は、EVの普及に伴い長期的に減少することが確実視されている。これに対し、部品メーカー各社は電動化対応部品や、自動運転・コネクティッド技術といった新領域へのシフトを急ピッチで進めている。
例えば、デンソーはEV向けのインバーターやモーター、熱管理システムなどの電動化製品を強化。同社は2025年度までに電動化関連の売上高を1兆円規模に拡大する目標を掲げている。また、アイシンはトランスミッションで培った技術を活かし、EV用のeアクスル(電動駆動モジュール)を開発。主要な完成車メーカー向けに供給を開始している。
部品メーカーの新領域開拓とM&A戦略
電動化への対応だけでなく、自動運転やコネクティッド、シェアリングなど新たなモビリティ領域への進出も重要だ。日立Astemoは、ADAS(先進運転支援システム)用センサーや制御システムを強化。さらに、ソフトウェア定義車両(SDV)に対応するためのソフトウェア開発にも注力している。
M&Aや提携も活発だ。住友電気工業は、電動車向けワイヤハーネスの需要増に対応するため、生産能力増強に投資。また、リチウムイオン電池の部材など、新規事業の育成も進めている。独部品大手コンチネンタルは、自動運転向けの高性能コンピューター「HPC」の開発を加速。完成車メーカーとの協業を拡大している。
部品メーカーの収益構造変化と今後の課題
EVシフトは部品メーカーの収益構造も変える。エンジン関連部品は高付加価値で利益率が高かったが、EV部品は競争が激しく、価格低下圧力が強い。そのため、規模の経済や技術差別化が重要となる。パナソニックは、円筒型リチウムイオン電池でテスラ向けに供給を拡大。車載電池事業の収益性改善を目指している。
しかし、すべての部品メーカーが生き残れるわけではない。中小部品メーカーは、電動化対応のための研究開発投資負担が重く、淘汰が進む可能性が高い。業界再編や事業ポートフォリオの見直しが今後さらに加速すると見られる。日本政策投資銀行の調査によれば、日本の自動車部品メーカーのうち、電動化対応に「積極的」と回答したのは約3割にとどまり、多くの企業が戦略の明確化を求められている。
完成車メーカーのEV戦略と部品メーカーへの影響
完成車メーカーのEV戦略の違いも、部品メーカーの対応を左右する。トヨタは全方位戦略を掲げ、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)も含めたマルチパスウェイを推進。これにより、部品メーカーはエンジン関連部品の需要を一定程度維持できる一方、電動化への投資も求められる。ホンダは2040年までにEV・FCVの販売比率100%を目標とし、部品メーカーへの影響は大きい。
日産は、独自のe-POWER技術やEV向け部品の内製化を進めており、部品メーカーにとっては受注機会の減少リスクがある。一方、ルノー・日産・三菱のアライアンスは、部品の共通化を推進。部品メーカーには、グローバルな競争力が求められている。
自動車部品産業の未来と地域経済への影響
自動車部品産業は、日本の製造業の中核であり、雇用や地域経済への影響は計り知れない。特に、エンジン部品に特化した中小メーカーが多い地域では、事業転換や廃業が相次ぐ可能性がある。経済産業省は、自動車部品メーカーの電動化対応を支援する補助金制度を設け、技術開発や設備投資を後押ししている。
業界団体である日本自動車部品工業会は、加盟企業の約7割がEVシフトによる影響を「非常に大きい」と認識していると報告。同会は、部品メーカー間の連携強化や、異業種との協業を促進するプラットフォームを提供している。自動車部品産業の変革は、日本の産業構造そのものを変える可能性を秘めている。



