電気自動車(EV)の普及に伴い、自動車部品の点数が従来のガソリン車と比較して約3分の1に減少することが、業界関係者の間で広く認識されている。この変化は、自動車部品業界に構造的な変革を迫っており、特に大手部品メーカーは部品の統合やモジュール化を進めるとともに、サプライチェーン全体の再編を加速させている。
部品点数削減がもたらすインパクト
ガソリン車にはエンジン、トランスミッション、排気系など約3万点の部品が使用されるが、EVではモーター、インバーター、バッテリーなどに集約され、部品点数は1万点程度にまで減少する。このため、従来の部品サプライヤーの中には、主要製品の需要が大幅に減少するケースが出てきている。例えば、エンジン部品や排気系部品を主力とする企業は、EVシフトに伴う需要減に対応するため、新たな製品開発や事業転換を迫られている。
大手部品メーカーのデンソーは、2035年までにエンジン関連部品の生産を段階的に縮小し、EV向けの熱管理システムやパワーエレクトロニクスに注力する方針を打ち出している。同社の関係者は「部品点数が減ることで、1社あたりの供給範囲が広がる。従来の単品供給から、システム全体を提案できる体制が必要だ」と述べている。
サプライチェーンの再編と中小企業への影響
部品点数の減少は、サプライチェーンの階層構造にも変化をもたらす。従来、1次サプライヤーが2次、3次サプライヤーから部品を調達し、完成部品を自動車メーカーに納入するピラミッド型構造が一般的だった。しかし、EV向けでは部品の統合が進み、1次サプライヤーがより多くの機能を内製化する傾向が強まっている。この結果、2次、3次サプライヤーの受注が減少し、事業継続が困難になるケースが増えている。
経済産業省の調査によると、2025年までに自動車部品サプライヤーの約3割がEVシフトに対応できず、廃業や事業売却を余儀なくされる可能性があるとされている。特に、エンジンやトランスミッションなど、EVで不要となる部品を専門に手掛ける中小企業への影響は深刻だ。
一方で、新たなビジネスチャンスも生まれている。EVのバッテリーやモーターに使われるレアアースや特殊素材の需要が高まっており、これらの素材を供給する企業は成長が期待される。また、EVの軽量化に貢献するアルミニウムや炭素繊維複合材料の需要も拡大している。
大手部品メーカーの戦略と業界再編の行方
こうした環境変化を受け、大手部品メーカーはM&Aや提携を通じて事業ポートフォリオの見直しを進めている。独ボッシュは、EV向けの電動パワートレインに特化した子会社を設立し、2026年までに100億ユーロの投資を計画している。日本でも、デンソーがトヨタ自動車と連携し、EV向けの統合型熱管理システムの開発を加速している。
業界再編はさらに進むと見られ、特に中堅サプライヤーの間では、EV関連事業に特化するか、従来の内燃機関向け事業を維持しつつ多角化するかの選択を迫られている。自動車部品大手の関係者は「EVシフトは避けられない。部品点数が減ることで、サプライチェーン全体の効率化が求められる。生き残るためには、技術力とコスト競争力の両立が不可欠だ」と指摘する。
政府も対応に乗り出している。経済産業省は、自動車部品サプライヤーの事業転換を支援するため、補助金や税制優遇措置を拡充する方針だ。また、業界団体である日本自動車部品工業会は、中小企業向けにEV関連技術の研修プログラムを開始し、人材育成を進めている。
EVシフトによる部品点数削減は、自動車産業の構造を根本から変える可能性を秘めている。部品メーカー各社は、この変革をチャンスと捉え、新たなビジネスモデルを構築できるかどうかが問われている。



