電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、ガソリン車向けのエンジンやトランスミッション、燃料噴射装置などを主力とする部品メーカーが大きな岐路に立たされている。2025年には世界のEV販売台数が2000万台を超えると予測され、従来の内燃機関車向け部品の需要は急減する見通しだ。
部品点数減少がもたらす構造変化
ガソリン車には約3万点の部品が使われるのに対し、EVは約2万点と3分の2以下に減少する。特にエンジンや排気系、燃料系の部品は不要となり、これらの分野に特化したメーカーは事業の根本的な見直しを迫られている。日本国内では、自動車部品産業の従業員は約90万人に上り、その多くがガソリン車関連の部品生産に従事している。
ある大手部品メーカーの幹部は「EVシフトは単なる部品の置き換えではなく、サプライチェーン全体の再編を意味する。従来の技術や設備が陳腐化するリスクと向き合わなければならない」と指摘する。
地域経済への波及効果
部品メーカーの集積地では、雇用不安が広がっている。例えば、愛知県や静岡県、岐阜県などでは自動車部品産業が地域経済の基盤を支えており、EVシフトによる需要減退は雇用喪失や税収減少につながる恐れがある。経済産業省の試算によれば、2030年までに部品産業で最大約10万人の雇用が影響を受ける可能性があるという。
さらに、中小の部品メーカーは研究開発費の負担に耐えられず、廃業や買収のリスクにさらされている。ある中小メーカーの社長は「EV向けのモーターやインバーターの生産に切り替えるには数十億円の投資が必要で、単独では難しい。大手との連携や業界再編が不可避だ」と語る。
事業転換の動きと課題
こうした中、部品メーカーは多角化や新分野への進出を模索している。例えば、エンジンバルブを手掛ける企業が水素関連部品に参入したり、燃料噴射装置メーカーが半導体製造装置向けの精密加工に活路を見いだすケースが出てきている。しかし、新たな技術や市場の開拓には時間と資金がかかり、すべての企業が成功するとは限らない。
政府も支援策を打ち出している。経済産業省は2023年度補正予算で、部品メーカーのEV関連事業への転換を支援するための補助金を拡充した。ただ、業界団体の関係者は「補助金だけでは不十分で、需要創出や人材育成を含めた総合的な対策が必要」と訴える。
自動車産業の100年に一度の変革期において、ガソリン車部品メーカーの生き残りをかけた戦いが本格化している。EVシフトの波は、単に環境対応の技術革新にとどまらず、日本の産業構造や雇用のあり方に根本的な問いを投げかけている。



