電気自動車(EV)へのシフトが加速する中、自動車部品業界はかつてない変革期を迎えている。内燃機関(エンジン)を中心とした従来の部品需要が減少する一方、モーターやバッテリー、パワーエレクトロニクスなど電動化に不可欠な部品の需要が急拡大している。この構造変化に対応するため、部品大手各社は事業ポートフォリオの大胆な転換を迫られている。
内燃機関部品の需要減少と電動化部品の拡大
日本自動車部品工業会の調査によると、2030年には世界の新車販売に占めるEVの割合が約30%に達すると予想されている。これに伴い、エンジンやトランスミッションなどの内燃機関関連部品の市場は縮小し、2030年までに現在の約7割の規模になると見込まれる。一方、EV向けのモーターやインバーター、バッテリーパックなどの電動化部品の市場は、2020年比で約5倍に拡大する見通しだ。
部品大手各社の対応策
こうした環境変化を受け、部品大手は生き残りをかけて戦略を転換している。デンソーは内燃機関部品の生産を段階的に縮小し、EV向けの熱マネジメントシステムやパワーエレクトロニクス製品に注力する方針を打ち出した。同社は2025年までに電動化関連の売上高を現在の2倍に引き上げる目標を掲げている。
アイシンはトランスミッションで培った技術を生かし、EV向けのeアクスル(モーターとギアを一体化した駆動ユニット)の開発を加速。2030年までに電動化製品の売上高を全体の5割以上にする計画だ。
また、住友電気工業はワイヤーハーネスや電線などEVに不可欠な部品の生産能力を増強。特に高電圧対応の部品に強みを持ち、EV需要の拡大を追い風に事業拡大を狙う。
中小部品メーカーの岐路
大手部品メーカーが生き残りをかけて積極投資する一方、中小部品メーカーは厳しい選択を迫られている。エンジン部品に特化した中小企業は、EVシフトによる需要減退に直面しており、事業転換やM&Aによる生き残り策が急務となっている。経済産業省の調査では、自動車部品サプライヤーの約3割がEVシフトにより事業存続に危機感を抱いているという。
新たな競争と協調の時代
自動車部品業界では、EVシフトを契機に異業種からの参入も相次いでいる。電機メーカーや素材メーカーがEV向け部品市場に参入し、従来の自動車部品メーカーとの競争が激化している。一方で、自動車メーカーと部品メーカーの協業も進んでおり、共同開発や資本提携を通じて競争力を高める動きも活発だ。
日産自動車のEV戦略責任者は、「部品メーカーとの協業なしにEV競争に勝ち残ることはできない。サプライチェーン全体での技術革新が求められている」と語る。
EVシフトは自動車部品業界に大きな変革をもたらしている。内燃機関から電動化への移行は、部品メーカーにとって脅威であると同時に、新たな成長機会でもある。生き残りをかけた各社の戦略が、今後の自動車産業の競争力を左右することになるだろう。



