世界的なEVシフトの加速により、自動車部品業界に大きな変革の波が押し寄せている。従来のエンジン関連部品の需要減少に直面する一方、電動化ユニットや軽量化素材など、新たな領域での競争が激化している。部品大手各社は、生き残りをかけて事業構造の転換を急いでいる。
エンジン部品の需要減少と電動化へのシフト
内燃機関(エンジン)を中心に成長してきた自動車部品業界だが、EVの普及に伴い、エンジン、トランスミッション、燃料系部品などの需要は長期的に減少することが確実視されている。日本政府は2035年までに新車販売を全て電動車とする目標を掲げ、海外でも同様の規制が相次いでおり、部品メーカーは対応を迫られている。
こうした中、部品大手はEV向けの中核ユニットやシステムの開発を加速。例えば、デンソーはEV向けのインバーターやモーター、熱マネジメントシステムなどの電動化製品を拡充。アイシンもEV向けのeアクスル(電動駆動モジュール)の量産を開始し、電動化事業の売上高を2030年までに現在の3倍以上に引き上げる計画だ。また、住友電工はEV向けのワイヤーハーネスや磁性材料で競争力を高めている。
軽量化素材と次世代技術への投資
EVの航続距離を延ばすため、車体の軽量化需要も高まっている。これを受け、日本製鉄や神戸製鋼所などの素材メーカーは、高張力鋼板やアルミニウム、炭素繊維などの軽量素材の供給を強化。特に、モーターやバッテリーケース向けの特殊鋼の需要が拡大している。また、三菱ケミカルグループは、EV向けの炭素繊維複合材料の生産能力を増強する方針だ。
さらに、自動運転技術の進展も部品業界に新たなビジネスチャンスをもたらしている。センサー、カメラ、LiDAR、半導体などの需要が急増しており、村田製作所やTDKなどの電子部品メーカーは、車載向けコンデンサーやセンサーの開発に注力。ロームはEV向けのパワー半導体で高いシェアを誇り、需要拡大に対応するため生産能力を増強している。
一方、エンジン関連部品に依存する中小部品メーカーは、生き残りが厳しさを増している。大手との取引縮小や事業撤退を余儀なくされるケースも出てきており、業界再編が加速する可能性がある。ある部品メーカーの幹部は「従来のビジネスモデルでは通用しない。電動化対応が遅れれば、淘汰されるのは避けられない」と危機感を露わにする。
業界再編と新たな競争の構図
こうした環境変化を受け、部品業界ではM&Aや提携が活発化している。2020年には、デンソーとアイシンが合弁会社「Blue Nexus」を設立し、電動化システムの共同開発を進めている。また、住友電工と日立金属は車載ワイヤーハーネス事業での協業を検討。さらに、海外では独ボッシュやコンチネンタルなども電動化事業に巨額投資を行っており、グローバルな競争が激化している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、2030年には世界のEV販売台数が約3000万台に達すると予測され、それに伴い電動化部品の市場規模は約40兆円に拡大する見通しだ。この市場を巡り、既存の自動車部品メーカーに加え、電機メーカーや素材メーカー、IT企業など異業種からの参入も相次いでいる。部品業界の地図は大きく塗り替えられようとしている。



