電気自動車(EV)へのシフトが加速する中、自動車部品業界に大きな変革の波が押し寄せている。従来のエンジン車に不可欠だった部品の需要が急減する一方、EV特有の部品の需要が拡大しており、部品メーカーは事業構造の抜本的な見直しを迫られている。
エンジン関連部品の需要減少とEV部品の需要拡大
内燃機関(エンジン)は約3万点もの部品で構成されるが、EVの駆動系はその約10分の1に減るとされる。これにより、ピストンやコンロッド、バルブ、燃料噴射装置など、エンジン関連部品を主力とする企業は、需要の激減に直面している。例えば、エンジンバルブ大手のリケンは、2023年度のエンジンバルブ売上高が前年比で約15%減少したと発表した。
一方、EVの中核部品であるバッテリーやモーター、インバーター、パワー半導体などの需要は急拡大している。住友電気工業は、EV用ワイヤハーネスの需要増に対応するため、2025年までに生産能力を2倍に増強する計画を明らかにした。同社の担当者は「EVシフトは予想以上の速さで進んでおり、供給体制の強化が急務だ」と述べている。
部品メーカーの生き残り戦略:事業再編と新技術投資
こうした構造変化に対応するため、多くの部品メーカーが事業再編を進めている。デンソーは、2025年度までにエンジン関連部品の生産から段階的に撤退し、EV・自動運転関連事業に経営資源を集中させる方針を打ち出した。同社の社長は「100年に一度の変革期に、積極的にポートフォリオを転換する必要がある」と強調した。
また、中小部品メーカーの中には、M&Aや提携を通じて生き残りを図る動きも見られる。例えば、エンジン部品専門のA社は、EV用モーター部品を手がけるベンチャー企業を買収し、事業の多角化を進めている。業界アナリストは「部品メーカーの淘汰が進み、生き残るのは技術力と財務体力のある企業に限られるだろう」と指摘する。
地域経済への影響と政府の支援策
自動車部品産業は、愛知県や静岡県など多くの地域で雇用を支える基幹産業である。EVシフトによる部品点数の減少は、これらの地域経済に大きな打撃を与える可能性がある。愛知県の試算では、EV化が進むと県内の自動車部品関連の雇用が最大で約3万人減少する可能性があるという。
これに対し、経済産業省は2024年度補正予算で、部品メーカーのEV関連事業への転換を支援するための補助金制度を拡充した。対象となるのは、EV用モーターやバッテリー、パワー半導体などの生産設備導入や研究開発で、最大で費用の3分の2が補助される。経産省の担当者は「部品メーカーの構造転換を後押しし、日本の自動車産業の競争力を維持したい」と述べている。
今後の展望:さらなる技術革新と業界再編
EVシフトは今後も加速し、2030年には新車販売に占めるEVの割合が世界で30%を超えるとの予測もある。これに伴い、部品メーカーにはより一層の技術革新と事業構造の改革が求められる。特に、次世代バッテリーや超小型モーター、車載OSなどの分野では、新たな市場が創出されると期待される。
一方で、エンジン車の部品を主力とする企業は、廃業や他業種への転換を余儀なくされるケースも増えるとみられる。業界団体の幹部は「厳しい状況だが、変化をチャンスと捉え、新たな価値を生み出す企業が生き残るだろう」と述べている。自動車部品産業は今、かつてない構造改革の真っただ中にある。



