電気自動車(EV)の世界的な普及加速に伴い、バッテリーの主要原料であるリチウムの需要が急増している。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2030年までにリチウム需要は2020年の約40倍に達する見込みだ。この需要急増に対し、供給が追いつかず、2025年には供給不足に陥る可能性が指摘されている。
需要急増の背景と現状
EV販売の急拡大がリチウム需要を押し上げている。2022年の世界のEV販売台数は前年比55%増の約1000万台に達し、新車販売に占める割合は14%に上昇した。主要自動車メーカーが相次いでEVシフトを表明し、バッテリー生産能力の拡大競争が加速している。
リチウムの主要産出国はオーストラリア、チリ、中国で、世界生産量の約90%を占める。しかし、新規鉱山の開発には5~10年を要し、短期間での供給拡大は困難だ。加えて、環境規制の強化や資源ナショナリズムの台頭が供給リスクを高めている。
供給不足の影響と業界の対応
供給不足が顕在化すれば、リチウム価格の高騰は避けられない。実際、2021年から2022年にかけてリチウム価格は約7倍に高騰し、バッテリーコストの上昇を招いた。これはEVの価格競争力に直接影響し、普及の足かせとなる可能性がある。
こうした事態を受け、自動車メーカーやバッテリーメーカーはリチウムの安定確保に向けた動きを加速させている。例えば、トヨタ自動車は2022年、リチウム鉱山開発会社に投資し、長期契約を締結した。また、パナソニックは北米でのバッテリー生産拡大に伴い、現地でのリチウム調達網の構築を進めている。
さらに、リチウムイオン電池に代わる次世代電池の開発も活発化している。全固体電池やナトリウムイオン電池など、リチウム使用量を削減する技術の実用化が期待されている。
資源確保競争の行方
リチウム資源を巡る国際的な競争は激化の一途をたどっている。中国はリチウム精製能力で世界の約60%を占め、供給網で優位に立つ。これに対し、米国や欧州連合(EU)は戦略的資源としてリチウムの確保を急ぎ、国内生産や友好国との連携を強化している。
日本政府も2023年、リチウムを「重要鉱物」に指定し、安定供給に向けた支援策を打ち出した。具体的には、資源探査や鉱山開発に対する融資や出資の拡大、リサイクル技術の開発促進などが含まれる。
専門家は「リチウム需給の逼迫は中期的に続く可能性が高く、資源外交や技術革新が競争力の鍵を握る」と指摘する。EVシフトの成否は、リチウムをはじめとするレアメタルの安定確保にかかっていると言える。



