東南アジアでEVシフト加速、中国勢が市場を席巻
東南アジアの自動車市場で、電気自動車(EV)へのシフトが急速に進んでいる。特にタイでは、EV販売の約70%を中国メーカーが占め、日本メーカーの存在感が薄れている。2023年のタイ国内のEV販売台数は約7万6000台と前年比で約4倍に拡大。うち中国の比亜迪(BYD)が約3万台で首位、上海汽車(SAIC)傘下のMG、長城汽車(GWM)が続く。一方、日本メーカーはトヨタがわずか約2000台、日産やホンダは1000台未満と苦戦している。
中国メーカーの攻勢、現地生産も拡大
中国メーカーは販売だけでなく、東南アジアでの現地生産も積極化している。BYDはタイに年産15万台の工場を建設中で、2024年稼働予定。長城汽車もタイで生産を開始し、部品調達の現地化を進める。また、上海汽車はインドネシアで工場を稼働させ、東南アジア全域での供給網を強化。価格競争力も高く、BYDのEVはタイで約100万バーツ(約400万円)と、日本車のエンジン車と同等の価格帯を実現している。
一方、日本メーカーはハイブリッド車(HV)に注力してきたが、EVシフトの遅れが顕著だ。トヨタはタイでHVを強化するものの、EVの現地生産計画は未定。日産は2023年にタイでEV生産を開始したが、台数は限定的。ホンダは2024年にインドでEV生産を予定するが、東南アジアでの本格展開は見通せていない。
日本メーカーの苦戦、岐路に立つ
タイ自動車工業会のデータによると、2023年のタイ新車販売に占める日本メーカーのシェアは約78%と依然高いが、EV市場では中国勢に大きく水をあけられている。日本メーカーはHVで先行するものの、EVへの移行が遅れれば、東南アジア全体での競争力低下は避けられない。同地域は日系自動車メーカーにとって重要な収益源であり、タイでは約60万台の生産能力を持つ。EVシフトへの対応が急務となっている。
専門家は「東南アジアは価格感応度が高く、補助金も充実しているため、中国勢の低価格EVが受け入れられている。日本メーカーがEVの現地生産に本腰を入れなければ、市場を失うリスクがある」と指摘する。実際、タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げ、購入補助金や減税措置を講じている。こうした政策も中国勢の追い風となっている。
今後の展望、日本メーカーの巻き返しは?
日本メーカーも巻き返しを図るが、課題は多い。トヨタは2026年までに10車種のEVを投入する計画だが、価格競争力が課題。ホンダは2024年に北米向けEV生産を開始するが、東南アジア向けの戦略は不透明。日産はタイでのEV生産を拡大する方針だが、部品調達や充電インフラの整備が進まないと、普及は難しい。
東南アジアのEV市場は2025年までに年率約30%で成長すると予測され、中国勢の勢いは続きそうだ。日本メーカーが伝統の品質やアフターサービスで差別化できるか、あるいは政府との連携でHVからEVへの移行を促進できるかが、生き残りの鍵を握る。



