EVシフト加速、中国勢が席巻する東南アジア市場の現実
EVシフト加速、中国勢が席巻する東南アジア市場 (30.06.2026)

東南アジアの電気自動車(EV)市場で、中国メーカーの存在感が急速に高まっている。2023年の東南アジア主要国におけるEV販売台数は前年比で2倍以上に拡大し、その多くを中国ブランドが占めた。とりわけタイでは、EV新車販売の約8割を中国メーカーが占めるに至り、長年この地域で支配的な地位を築いてきた日系自動車メーカーにとって大きな脅威となっている。

中国勢が席巻するタイ市場

タイは東南アジア最大の自動車生産・販売国であり、EV普及の最前線でもある。2023年のタイにおけるEV販売台数は約7万6000台と前年から急増。このうち、中国の比亜迪(BYD)が約3万台でトップ、上海汽車(SAIC)のMGや長城汽車(GWM)が続く。上位10モデルのうち7つを中国ブランドが占め、日系メーカーはトヨタのbZ4Xや日産リーフなどが辛うじてランクインする程度だ。

中国メーカーの強みは、豊富なモデルラインアップと積極的な価格設定にある。BYDのコンパクトEV「ATTO 3」はタイでの販売価格を約110万バーツ(約440万円)と、同クラスのガソリン車と同等かそれ以下に設定。さらに政府のEV購入補助金も追い風となり、価格競争力を高めている。タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVとする目標を掲げ、消費税減免や補助金制度を導入。中国メーカーはこうした政策を巧みに活用している。

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日系メーカーの苦戦と遅れ

一方、長年東南アジア市場で高いシェアを誇ってきた日系メーカーは、EVシフトで大きく出遅れている。トヨタ、ホンダ、日産などはハイブリッド車(HV)に注力してきたが、完全EVの投入は限定的。トヨタは2022年末にタイでbZ4Xを発売したが、価格は約180万バーツと中国勢より高く、販売台数は伸び悩む。

日系メーカーの弱みは、EV向けサプライチェーンの構築の遅れにも表れている。中国メーカーはバッテリーやモーターなどの主要部品を自社で生産する一方、日系メーカーは既存の内燃機関向けサプライチェーンに依存。タイ政府はEV部品の現地調達率を高める政策を進めており、日系メーカーは対応を迫られている。

インドネシア、マレーシアでも中国勢が攻勢

タイに続き、インドネシアやマレーシアでも中国メーカーの攻勢が強まっている。インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵量を誇り、EVバッテリー生産の拠点として注目。中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションが大規模なバッテリー工場を建設中だ。また、BYDは2024年にインドネシアでEV生産を開始する計画で、地元企業との合弁を模索している。

マレーシアでは、中国の吉利汽車(Geely)と地元プロトン(Proton)の提携が進む。吉利はプロトンに出資し、EVモデルの投入を計画。さらに、中国の上海汽車はマレーシアでMGブランドのEVを販売し、販売網を拡大している。

日本メーカーの巻き返し戦略

こうした状況を受け、日系メーカーも巻き返しに動き始めた。トヨタは2024年までにタイでピックアップトラックのEV「IMV 0」を発売する計画。また、ホンダは2024年にインドでEVを投入し、その後東南アジアにも展開する方針。日産はタイでEV向けの部品生産を強化し、現地調達率を高める。

しかし、中国メーカーの先行優位は大きく、日系メーカーの巻き返しには時間がかかるとみられる。東南アジアのEV市場は2020年代後半にはさらに拡大すると予想され、中国勢のシェアは当面維持される可能性が高い。日本メーカーが生き残るには、価格競争力の向上と、現地政府との連携強化が不可欠だ。

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