世界の電気自動車(EV)市場で販売の伸びが鈍化する中、テスラと中国のEVメーカーとの間で価格競争が激化している。2024年の世界EV販売台数は前年比で約20%増の見込みだが、前年の35%増から減速しており、需要の冷え込みが顕著だ。
テスラのシェア低下と値下げ攻勢
テスラは2024年第1四半期の世界販売台数が約38万6千台と、前年同期比で8.5%減少した。これは2020年以来初の前年割れであり、市場の予想を下回る結果となった。これを受け、テスラは主要市場で値下げを実施。米国では「モデル3」の一部グレードを約2000ドル値下げし、中国では「モデルY」の価格を約5%引き下げた。しかし、値下げによる販売促進効果は限定的で、利益率の圧迫が懸念されている。
一方、中国のEVメーカーは攻勢を強めている。比亜迪(BYD)は2024年第1四半期に約30万台のEVを販売し、テスラに迫る勢いだ。BYDは低価格帯の「海鷗(シーガル)」や「秦(チン)プラス」などで販売を伸ばし、中国国内市場でのシェアを拡大。さらに、欧州や東南アジアへの輸出も加速させている。
欧州メーカーの苦戦と中国勢の台頭
欧州の伝統的な自動車メーカーもEVシフトで苦戦している。フォルクスワーゲン(VW)は2024年第1四半期のEV販売台数が約8万2千台と、前年同期比で約3%増にとどまった。同社はEV普及の遅れや中国市場での競争激化を背景に、2024年の販売目標を下方修正した。同様に、ステランティスやルノーもEV販売の伸び悩みに直面している。
中国勢の台頭は目覚ましい。BYDに加え、上海汽車集団(SAIC)や吉利汽車(Geely)もEV販売を拡大。特にSAICは、英国ブランドのMGを傘下に持ち、欧州市場で存在感を高めている。2024年第1四半期のMGの欧州での販売台数は約2万5千台と、前年同期比で約2倍に増加した。
価格競争の行方と業界再編
価格競争の激化は、EVメーカーの収益性を圧迫している。テスラの2024年第1四半期の営業利益率は約5.5%と、前年同期の11.4%から半減。BYDも値下げ競争の影響で利益率が低下している。業界アナリストは「価格競争は今後も続き、体力のないメーカーは淘汰されるだろう」と指摘する。
さらに、各国政府の補助金縮小や充電インフラの整備遅れも、EV需要の頭打ち要因となっている。米国ではインフレ抑制法(IRA)による税額控除の対象拡大が期待されるが、具体的な効果は不透明だ。欧州連合(EU)も2035年までのガソリン車新車販売禁止を掲げるが、足元の需要減速を受けて見直し論も出ている。
今後の展望と課題
長期的にはEVシフトの流れは変わらないものの、短期的な需要の変動にどう対応するかが各社の課題だ。テスラは自動運転技術やロボタクシー事業への投資を加速し、新たな収益源の確保を目指す。一方、中国勢は低価格戦略に加え、バッテリー技術の向上や海外生産拠点の拡大を進めている。
業界再編の動きも活発化している。中国のEV新興企業である小鵬汽車(Xpeng)や理想汽車(Li Auto)は、資金調達に苦戦しており、合従連衡の可能性が指摘される。欧米メーカーも、中国勢との提携やバッテリーサプライチェーンの強化を模索している。
EV市場の競争はますます激しさを増しており、各社の戦略が試される局面を迎えている。



