EV販売減速で自動車業界が直面する新たな課題と戦略転換
EV販売減速で自動車業界が直面する新たな課題

世界的な電気自動車(EV)販売の減速が鮮明になり、自動車メーカー各社は戦略の見直しを迫られている。2024年の世界EV販売台数(バッテリー式電気自動車、BEV)は前年比20%増の約1700万台と予測されるが、これは2023年の35%増から伸び率が大幅に鈍化している。特に欧州市場では、各国政府が補助金を縮小したことが需要に冷や水を浴びせている。

欧州で補助金縮小、需要減退

ドイツでは2023年12月にEV購入補助金が突然打ち切られ、2024年上半期の新規EV登録台数は前年同期比16%減少した。フランスでも補助金の対象車種が絞り込まれ、イタリアでは予算枠が早期に枯渇した。欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2024年1~6月のEU域内のBEV販売台数は約70万台で、前年同期比1%増にとどまった。

この状況に対し、フォルクスワーゲン(VW)は2024年7月、IDシリーズの生産調整を発表。同社の広報担当者は「補助金政策の不透明さが市場に悪影響を及ぼしている」とコメントした。一方、テスラは2024年4月に欧州での販売価格を最大20%引き下げたが、販売台数の回復は限定的だ。

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中国勢の攻勢と価格競争激化

中国市場では、BYDや上海汽車など現地メーカーが低価格EVを投入し、価格競争が激化している。2024年上半期の中国BEV販売台数は前年同期比15%増の約310万台だが、平均販売価格は2023年比で約8%下落した。中国汽車工業協会は、2024年通年のBEV販売台数を前年比18%増の約650万台と予測するが、メーカーの収益性は悪化している。

こうした中、日産自動車は2024年7月、2026年までに投入予定だった新型EVの開発計画を一部延期すると発表。同社の内田誠社長は「市場の成熟度を見極める必要がある」と述べ、戦略の柔軟性を強調した。トヨタ自動車も2024年6月、次世代EVの生産開始を2027年から2028年に延期する方針を明らかにした。

日本市場でもEV普及に課題

日本国内では、2024年上半期のBEV販売台数は前年同期比5%減の約3万5000台と低迷。充電インフラの不足やモデル選択肢の少なさが課題だ。日本自動車工業会の調査によると、消費者のEV購入意欲は2023年の22%から2024年には18%に低下した。特に地方では充電設備が不足しており、普及の壁となっている。

経済産業省は2024年度、EV充電インフラ整備に500億円の補助金を計上したが、業界関係者からは「十分ではない」との声が上がる。日産自動車は2024年8月、国内の販売店に急速充電器を設置する計画を発表したが、その数は200基にとどまる。

自動車メーカーの対応戦略

各メーカーはEV一辺倒から、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を含む多様なパワートレイン戦略へと舵を切りつつある。トヨタは2024年6月、次世代HVの開発を加速すると発表。同社の佐藤恒治社長は「お客様の選択肢を広げるため、全方位戦略を継続する」と述べた。ホンダも2024年7月、北米市場でHVの販売を強化する方針を打ち出した。

一方、中国のBYDは欧州での生産拠点設立を計画しており、2025年からハンガリー工場でEV生産を開始する。同社のアジア太平洋地域責任者は「欧州市場は長期的に成長する」と述べ、投資を継続する方針だ。

今後の見通し

国際エネルギー機関(IEA)は2024年4月の報告書で、世界のEV販売台数は2030年に約4000万台に達すると予測するが、その実現には充電インフラの整備やバッテリー価格の低下が不可欠と指摘する。自動車業界は短期的な需要減退と長期的な成長期待の狭間で、柔軟な戦略が求められている。

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