EVシフトに黄信号?欧州販売低迷の実態と日本の戦略
EV販売低迷で日本にチャンス?欧州の実態

欧州連合(EU)の2035年ガソリン車新車販売禁止目標に黄信号がともっている。2024年、域内の電気自動車(EV)販売は前年比で伸び悩み、主要市場であるドイツでは補助金打ち切りが響いて販売台数が減少した。日本メーカーは、ハイブリッド車(HV)の強みを活かし、EV一辺倒ではない現実的な戦略で巻き返しを図っている。

欧州EV販売の減速要因

欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2024年1~6月のEU域内のEV販売台数は約70万台で、前年同期比1%増にとどまった。特にドイツでは、2023年末にEV購入補助金が突然打ち切られた影響で、2024年上半期のEV販売は前年同期比16%減の約18万台となった。一方、HVを含む電動車全体では市場シェアが50%を超え、HVの人気がEVを上回っている。

背景には、充電インフラの不足や航続距離への不安、そしてEV価格の高さがある。ドイツ連邦自動車運輸局(KBA)の調査では、消費者の約6割が「次に購入する車はHV」と回答し、EVと答えたのは2割未満だった。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

日本メーカーの強みと戦略

こうした中、トヨタ自動車は欧州市場でHVの販売を強化。2024年上半期の欧州でのHV販売は前年同期比15%増の約35万台で、同社の欧州販売の約4割を占めた。トヨタの欧州部門責任者は「顧客はすぐにEVに切り替える準備ができていない。HVは現実的なソリューションだ」と述べている。

ホンダも2024年に欧州で新型HVを投入し、販売台数は前年比20%増を見込む。日産自動車は、EVのリーフに加え、2025年からHVモデルを欧州で投入する計画だ。日本メーカー全体では、欧州でのHV販売が2024年に過去最高を更新する見通しである。

欧州の規制見直しとEVシフトの行方

EUは2026年に2035年目標の見直しを予定しており、EVシフトのペースダウンが議論されている。ドイツ自動車工業会(VDA)のミュラー会長は「目標自体は正しいが、達成手段は柔軟であるべきだ。HVも脱炭素に貢献できる」と指摘する。

一方、欧州のEV大手であるフォルクスワーゲン(VW)は、2024年に欧州でEV販売が前年比10%減と苦戦。VWはバッテリー生産の内製化を計画していたが、需要減を受けて工場稼働を延期した。テスラも欧州での販売が減速し、2024年上半期の販売台数は前年同期比5%減となった。

日本の戦略の有効性

日本の自動車メーカーは、EVだけでなくHVやプラグインハイブリッド車(PHV)、水素燃料電池車(FCV)など多様なパワートレインを展開する「マルチパスウェイ戦略」をとる。この戦略が、欧州市場の現実に合致しているとの見方が強い。

経済産業省の自動車課長は「日本メーカーのHV技術は世界最高水準で、欧州の厳しい排ガス規制にも対応できる。EVシフトが減速する中、日本の強みが生きる」と語る。実際、2024年の欧州新車販売に占める日本メーカーのシェアは、HVの好調により前年比1.2ポイント増の8.5%となった。

今後の展望

EUは2035年目標を維持しつつ、合成燃料(e-fuel)やHVの活用を認める方向で調整中だ。2025年にはCO₂排出規制がさらに厳しくなるが、日本メーカーはHVの電費改善やEVの低価格化で対応する。トヨタは2026年までに欧州でEVを5モデル投入する計画だが、同時にHVのラインアップも拡充する。

専門家は「日本メーカーの柔軟な戦略は、市場の不確実性に適応している。EV一辺倒ではないことが、長期的な競争力につながる」と評価する。欧州のEVシフトは減速したが、完全に止まるわけではない。日本メーカーは、HVで稼ぎつつEV技術も磨く「二足のわらじ」で、変化する市場を生き抜くことになりそうだ。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ