東南アジアの自動車市場で、中国の電気自動車(EV)メーカーの存在感が急速に高まっている。2023年の新車販売に占める中国EVブランドのシェアは約6%と、前年の約2%から3倍に拡大した。この背景には、中国政府の積極的なEV輸出戦略と、東南アジア諸国が推進するEV普及政策がある。
中国EVメーカーの躍進
中国のEVメーカー、特にBYD(比亜迪)や上海汽車(SAIC)などが東南アジア市場で販売を伸ばしている。BYDはタイで2022年に乗用車販売を開始し、2023年にはタイのEV市場でシェア約40%を獲得した。また、インドネシアやマレーシアでも販売網を拡大している。
これらの中国メーカーは、価格競争力と豊富な車種ラインナップを武器に、従来日系メーカーが支配してきた東南アジア市場に切り込んでいる。例えばBYDのコンパクトEV「ATTO 3」は、タイで約110万バーツ(約440万円)から販売され、同クラスのガソリン車と競合する価格帯を実現している。
日系メーカーの対応
一方、長年東南アジア市場で高いシェアを誇るトヨタやホンダなどの日系メーカーは、EVシフトで後れを取っている。トヨタはタイで2023年にEV「bZ4X」を発売したが、価格は約180万バーツ(約720万円)と高く、販売は伸び悩んでいる。代わりに日系メーカーはハイブリッド車(HV)で対抗しているが、EVの勢いには及ばない。
日系メーカーの東南アジア市場でのシェアは、2023年時点で約70%を維持しているものの、EVセグメントでは中国勢に大きく水をあけられている。専門家は「日系メーカーがHVからEVへの移行を加速しなければ、今後数年で市場シェアを失う可能性がある」と指摘する。
東南アジア諸国のEV政策
東南アジア諸国は、EV普及に向けた政策を相次いで打ち出している。タイは2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げ、購入補助金や輸入関税の引き下げを実施。インドネシアはEVバッテリー産業の誘致に力を入れ、ニッケル資源を活用したサプライチェーン構築を目指す。マレーシアもEV充電インフラ整備に補助金を出すなど、積極的だ。
これらの政策が中国EVメーカーの進出を後押ししている。中国メーカーは、タイやインドネシアで現地生産を開始し、関税優遇を受けることで価格競争力をさらに高めている。
今後の展望
東南アジアのEV市場は、2023年に約8万台(前年比約2倍)と急拡大している。この成長は今後も続き、2030年には新車販売の約30%がEVになると予測される。中国メーカーはこの成長を取り込み、日系メーカーを追い詰める可能性が高い。
日系メーカーもEV投資を加速しており、トヨタは2026年までに10車種のEVを投入する計画。ホンダもタイでEV生産を開始した。しかし、中国メーカーの先行優位は大きく、巻き返しには時間がかかるとみられる。
東南アジア市場の主導権争いは、自動車業界の勢力図を大きく変える可能性を秘めている。



