中国の電気自動車(EV)メーカーが、欧州連合(EU)による関税引き上げを回避するため、東南アジアでの生産拠点の拡大を加速させている。これにより、タイやインドネシアを中心に現地生産が急増し、地域のEV産業構造に大きな変化が生じている。
欧州関税引き上げの背景
EUは2024年10月から、中国製EVに対する関税を最大45%に引き上げる方針を固めた。これは、中国政府によるEV産業への補助金が不当な競争優位をもたらしているとの判断に基づく。これに対し、中国のEVメーカーは関税回避のため、東南アジア諸国での生産を本格化させている。
タイでの生産拡大
タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、中国EVメーカーの進出が特に顕著だ。比亜迪(BYD)は2024年7月にタイ工場を稼働開始し、年間15万台の生産能力を持つ。また、長城汽車(GWM)もタイでEV生産を拡大しており、2024年には同国でのEV生産台数が前年比で50%増加する見通しだ。タイ政府はEV普及を促進するため、購入補助金や税制優遇措置を提供しており、こうした政策が中国メーカーの進出を後押ししている。
インドネシアへの進出
インドネシアも中国EVメーカーの重要な生産拠点となりつつある。同国は世界最大のニッケル埋蔵量を誇り、EVバッテリーの主要原料であるニッケルの供給源として注目されている。上海汽車集団(SAIC)と合弁会社を設立した中国のEVメーカーは、2025年までにインドネシアで年間10万台の生産を目指している。インドネシア政府はEV産業の育成に積極的で、2024年にはEV購入に対する補助金制度を導入した。
地域のEV産業構造の変化
中国メーカーの進出により、東南アジアのEV産業構造は大きく変わりつつある。従来、日本メーカーが支配的だったタイの自動車市場では、中国メーカーのシェアが急拡大している。2024年第1四半期のタイEV販売台数は前年同期比で3倍に増加し、その大半を中国ブランドが占めた。この動きは、日本メーカーにとって大きな脅威となっている。
日本メーカーの対応
日本メーカーも東南アジアでのEV生産を強化している。トヨタ自動車はタイでEV生産を開始し、2025年までに年間10万台の生産を計画。ホンダも2024年にタイでEV生産を開始する予定だ。しかし、中国メーカーの急速な進出に追いつくのは容易ではない。東南アジアのEV市場は2025年までに年間100万台規模に成長すると予想され、競争はさらに激化する見通しだ。
今後の展望
中国EVメーカーの東南アジア進出は、欧州関税回避の短期的な戦略にとどまらず、長期的な市場開拓の一環でもある。東南アジア諸国はEV普及率がまだ低く、成長余地が大きい。また、地域的なサプライチェーンの構築により、生産コストの削減も期待できる。一方で、現地政府の政策変更やインフラ整備の遅れがリスク要因となる。今後の動向が注目される。



