グローバル自動車市場において、日本のトヨタ自動車の存在感は依然として圧倒的である。2025年の世界販売台数は1132万2575台(ダイハツ工業と日野自動車含む)で前年比4.6%増加し、過去最高を更新。ドイツのフォルクスワーゲン・グループ(VW)に233万台以上の差をつけ、6年連続で世界首位の座を守った。また、2026年3月期決算では純利益3兆8480億円を計上。これは世界販売台数上位10社のうち、トヨタを除く9社の純利益合計に匹敵する。
トヨタの強さの秘密:マルチパスウェイ戦略
2020年代に入り、各社はEVシフトを競ってきたが、欧州市場では2024年以降、米国市場では2025年後半からEV販売が鈍化。一部メーカーは新型EVの開発中止や巨額の減損を余儀なくされた。一方トヨタは、EVに偏らずPHVやHVなど多様なパワートレーンを地域需要に合わせて供給する「マルチパスウェイ(全方位)」戦略を採用。この独自路線がEV失速の衝撃を和らげ、トヨタの強さを際立たせた。
しかし、将来に目を転じるとトヨタの市場基盤は盤石とは言い切れない。EV・PHVの販売比率は4%未満にとどまり、世界最大の自動車市場である中国では、BYDなど地場メーカーの猛攻に直面している。中国市場での販売台数は減少傾向にあり、トヨタは現地化を加速せざるを得ない状況だ。
中国メーカーの海外進出急拡大
中国自動車メーカーは海外市場への進出を急ピッチで進めている。BYDは2025年に欧州や東南アジアで販売網を拡大し、タイでは工場を稼働させた。また、上海汽車(SAIC)や吉利汽車(Geely)も欧州市場でのシェアを伸ばしている。中国汽車工業協会によると、2025年の中国製乗用車の輸出は前年比30%増の約500万台に達し、日本を抜いて世界一の輸出大国となった。
これに対し、トヨタは中国市場での巻き返しを図るため、現地化を加速。広汽トヨタは中国人チーフエンジニアを登用して開発したEV「bZ3X」を投入し、中国消費者のニーズに合ったモデルを投入している。また、トヨタは中国での研究開発拠点を拡充し、2026年までにEVの現地生産体制を強化する計画だ。
米国市場という安全地帯
トヨタにとって米国市場は依然として重要な収益源である。2025年の米国販売台数は240万台を超え、HVモデルが好調。特に「RAV4」や「カムリ」のHV版は燃費性能が評価され、ガソリン車からの乗り換え需要を捉えている。米国ではEV補助金の対象外となるモデルもあるが、トヨタはHVのラインアップを拡充することで対応している。
しかし、中国メーカーの米国市場参入は現時点では限定的だ。関税や規制の壁があり、BYDなどは米国での販売を本格化していない。一方、中国メーカーは欧州や東南アジア、中東などで存在感を高めており、トヨタの地盤を脅かしつつある。
「地道な努力を侮るな」:トヨタの教訓
中国メーカーはトヨタに学ぶべき点が多い。トヨタの強みは、生産現場の改善(カイゼン)やサプライチェーン管理、品質へのこだわりといった「地道な努力」にある。BYDなど中国メーカーはEVで先行するが、長期信頼性やアフターサービスではトヨタに及ばない面がある。トヨタの幹部は「中国メーカーの勢いは認めるが、自動車産業は一発屋では通用しない」と指摘する。
一方、中国メーカーはソフトウェアやバッテリー技術で優位に立ち、特にスマートコックピットや自動運転機能で差別化を図っている。トヨタはこうした分野での競争力を高めるため、中国のテクノロジー企業との提携を模索している。
今後の展望:どちらが勝つのか
短期的にはトヨタの収益力とブランド力が勝るが、長期的には中国メーカーの成長が脅威となる。トヨタはEV比率を2030年までに30%に引き上げる目標を掲げるが、達成には中国市場での巻き返しが不可欠だ。中国メーカーは海外生産を拡大し、現地ニーズに合わせたモデルを投入することで、トヨタの牙城を崩そうとしている。
結論として、トヨタは現状の強さを維持しつつ、中国市場での現地化とEV投資を加速する必要がある。中国メーカーは品質と信頼性の向上が課題だ。両者の攻防は今後10年間で自動車業界の地図を大きく変えるだろう。



