日本の電気自動車(EV)シフトが世界的に遅れている。2023年の新車販売に占めるEVの割合は約2%と、欧州(約20%)や中国(約25%)に大きく水をあけられている。その背景には、充電インフラの不足、車両価格の高さ、政府の支援策の遅れなど、複数の要因が絡み合っている。
充電インフラの整備不足
日本では、充電スタンドの数が十分でない。経済産業省のデータによると、2023年末時点で全国の充電器は約3万基。一方、欧州連合(EU)では約50万基、中国では約260万基に達する。特に急速充電器の普及が遅れており、高速道路のサービスエリアでの設置が限定的だ。
「充電インフラの整備はEV普及の前提条件だが、日本では事業採算性の低さから民間投資が進まない」と、日本自動車工業会の関係者は指摘する。政府は2025年までに充電器を15万基に増やす目標を掲げるが、達成は容易ではない。
車両価格の高さと選択肢の少なさ
EVの価格は依然として高い。日産リーフの最低価格は約400万円で、ガソリン車の同クラスと比べ100万円以上高い。トヨタのbZ4Xは約600万円と、さらに高額だ。また、日本市場で販売されるEVモデルは20種類未満と、中国(200種類以上)や欧州(100種類以上)に比べ選択肢が限られる。
「消費者のEVへの関心は高まっているが、価格と選択肢の壁が大きい」と、自動車評論家の国沢光宏氏は話す。補助金を活用しても、ガソリン車との価格差を埋めるには至っていない。
政府の支援策の遅れ
日本政府のEV普及策は、欧州や中国に比べ出遅れている。2023年度のEV購入補助金は最大85万円だが、ドイツ(最大約100万円)やフランス(最大約80万円)と大差ない。しかし、税制優遇や充電インフラ投資では欧州に劣る。また、2035年までのガソリン車新車販売禁止目標を掲げるものの、具体的なロードマップが不明確だ。
「日本の政策は、EVシフトのスピード感を欠いている」と、東京大学の藤本隆宏教授は指摘する。産業競争力強化の観点からも、より強力な支援が必要だ。
ハイブリッド車への依存
日本メーカーは、長年ハイブリッド車(HV)に注力してきた。トヨタのプリウスなどHVは世界で高いシェアを誇るが、それがEVへの転換を遅らせている。HVはガソリン車より燃費が良く、当面の二酸化炭素削減に寄与するが、長期的にはEVへの移行が不可欠だ。
「日本メーカーのHV技術は優れているが、EV競争で出遅れるリスクがある」と、自動車アナリストの中西孝樹氏は警鐘を鳴らす。特に中国メーカーの急速な台頭により、市場競争が激化している。
電力供給の課題
EV普及には、安定した電力供給が欠かせない。日本では、再生可能エネルギーの割合が約20%と、欧州(約40%)に比べ低い。電力系統の脆弱性も指摘され、EV充電による電力需要増加への懸念がある。政府は2030年までに再エネ比率を36~38%に引き上げる目標を掲げるが、実現には大規模な投資が必要だ。
「EVシフトは、エネルギー政策と一体で進めなければならない」と、経済産業省の担当者は強調する。電力の脱炭素化と充電インフラの整備を同時に推進する必要がある。
今後の展望
日本でも、EV市場は徐々に拡大すると予想される。2024年には、ホンダや日産が新型EVを投入予定で、選択肢の増加が期待される。また、自動運転技術との連携や、車両を蓄電池として活用するV2G(Vehicle to Grid)技術の実証実験も進む。
「日本がEVシフトで巻き返すには、官民連携による総合戦略が不可欠だ」と、日本総合研究所の主席研究員、山本隆三氏は提言する。充電インフラの拡充、価格低減、電力システム改革など、多面的な取り組みが求められる。
世界のEV市場は急速に成長しており、2023年の世界販売台数は約1400万台に達した。日本もこの流れに乗り遅れないよう、早急な対策が急務となっている。



