愛知・名古屋アジア大会(読売新聞社協賛)で、海外チームの監督やコーチを務める日本人が活躍している。実力が認められたり、国際協力機構(JICA)の活動だったりと背景は様々だが、言語や慣習の違いに悩みながら選手の育成や競技の普及に取り組んでいる。
シンガポール水球男子、体格近い日本戦術で4強入り狙う
シンガポールの水球男子代表監督を務めるのは、欧州のプロリーグでも活躍した青柳勧さん(46)。約5年前に同国に招かれた。大会のため来日した選手らは19日、新潟県内でゲーム形式の練習を行い、英語で指示を送る青柳さんは「細かなニュアンスを伝えられないこともあるが、選手たちが僕の言いたいことを理解してくれるようになった」と話す。
目標は4強入り。現在は予選リーグ1勝1敗で、リーグ最終戦となる28日夕方に中国と対戦する。背丈や体格が近い日本の戦術を採用しているといい、サンジブ・ラジャンドラ主将(24)は「私たちの強さがより発揮できる」と語る。
青柳さんは若手の育成にも力を入れる。今年、アジア諸国が参加した大会で4強入りしたユースチームについては「世代交代する頃には決勝に上がれるチームになる」と期待を寄せる。「中国人が世界で卓球を指導しているように、日本人の指導者を世界に輸出したい」との思いも持つ。
タイのソフトボール女子、笑顔で選手とうち解ける
タイのソフトボール女子代表コーチ、佐藤はづきさん(24)は、強豪の中京大(愛知県)で競技経験がある。「ほほ笑みの国」と呼ばれる地元民にも負けない笑顔がトレードマークだ。練習前はグラウンドに一礼し、「選手たちがけがなく練習できますように」と祈る。
タイ語を学び、昨年8月にJICAの海外協力隊として派遣された。当初は年上の選手が指示に従わないばかりか、反発されることもあった。年上を敬う「長幼の序」の慣習があるためだと思われた。代表監督の秋元理紗さん(44)から「同じ目線で接すればいい」と助言を受け、選手には笑顔で「コップンカー(ありがとう)」と言うように努め、うち解けていった。今は名字にちなみ、タイ語で「砂糖」を意味する「ナムターン」というあだ名で呼ばれる。
中京大と6月に行った交流試合では力の差を感じたが、佐藤さんは「いずれはプレッシャーを感じさせるチームにしたい」と誓う。ソフトボール世界ランキング(昨年12月時点)1位の日本に対し、タイは44位。競技人口の偏りで五輪種目から外れる懸念もあり、同大ソフトボール部の二瓶雄樹部長兼監督(45)は「海外で指導する人が増えてほしい」と望んでいる。
JICAとJOC、指導者の海外研修に長年尽力
JICAと日本オリンピック委員会(JOC)は長年、スポーツ指導者の海外研修に力を入れてきた。JICAは1965年度から海外協力隊の「スポーツ隊員」として、野球や柔道、バレーボールなど約30分野で計約5200人(今年3月時点)を派遣した。JOCは79年度に海外への研修事業を始め、これまでに約260人を派遣した。
直近10年間では研修を終えて帰国した人のうち13人が、五輪の日本代表監督・コーチなどに就任した。海外の先進的なトレーニングを持ち帰り、レベルが向上した競技もある。フェンシングやレスリング、スケートは五輪でのメダル獲得も増えているという。近年の円安傾向や物価高などで派遣コストが高騰しており、担当者は「限られた財源で質の高い研修機会を継続していくことが課題」としている。