「よく聞こえなかったデスら」──『ドラクエ』に“AIキャラ”登場、世界観を守るために挑戦させた創意工夫
「よく聞こえなかったデスら」──『ドラクエ』に“AIキャラ”登場、世界観を守るための創意工夫

『ドラゴンクエストX オンライン』に、生成AIを活用した対話型AIパートナー「おしゃべりスラミィ」が登場する。2026年4〜5月にはクローズドベータテストが実施された。

「よく聞こえなかったデスら」──AIキャラの登場

「ワガハイはスラミィ。死神見習いデスら。あなたのことは『死神手帳』で知っていたデスら」──スラミィはこう話しかけてくる。

スラミィは、プレイヤーの問いかけに音声とテキストで答える。「ゲーム初心者に次のクエストを提案する」「前日の会話を覚えておく」「写真撮影時やログイン時などに自ら話しかけてくる」といった動作をする。

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こうした要件を掲げた理由を、スクウェア・エニックスの開発元(プログラマー)はこう語る。

「AIとプレイヤーが、まるでゲームの世界に入り込んだかのような自然な対話を実現するためには、単に正しい日本語を返すだけでは不十分だ。AIキャラクター自身に一貫した個性があり、さらにプレイヤーの個性を理解したうえで言葉を交わす必要がある」

キャラクター性を付与するシステムプロンプト

この考えを実現する上で中核になるのが、AIシステムに対して事前に指示を書き込んでおく「システムプロンプト」にキャラクター性を付ける工程だ。開発側は、役割や世界観、好きな漢字、語尾といった設定を書き込む。

プレイヤーには、ゲーム内の対話で「MBTI」を参考にした性格診断を受けてもらい、その結果をスラミィの回答に反映する。性格別に人称や口癖を定義することで、プレイヤーごとに異なる「自分だけのスラミィ」が立ち上がる。

音声にも工夫がある。当初は音声合成技術(TTS:Text-to-Speech)も検討したが、人間の発話としては十分でも「キャラクターとしては物足りなかった」(開発者)。そこで、声とテキストを同時に生成できるGoogleの「Gemini Live API」を採用。「デスら」という一般的でない語尾も、プロンプトを駆使してイントネーションを調整した。

「AIが自分から話しかけてくるシステム」の設計

会話を重ねると関係も変わる。スラミィではない別のAIが会話内容を評価し、経験値として加算する。経験値が一定量たまると親密度が上がって「他人行儀」から「相棒」まで4段階でシステムプロンプトが切り替わる。スラミィの言葉選びが柔らかくなり、やがてユーザーを名前で呼んでくれるようになる。

開発者が「相棒」の条件として特に重視したのは、AIから話しかける機能だ。「相棒として振る舞うためには、AI自身からプレイヤーに向けた自発的な発言も重要になる」と説明する。

仕組みは単純だ。プレイヤーが装備を変えたりボスを倒したりすると、ユーザーに気付かれないようにゲームの裏側でAIに指示を送る。バトルなら「プレイヤーが初めてこのボスを倒したので褒めてください」といったプロンプトが送られ、スラミィが自ら語りかけているように見える仕組みだ。

記憶は短期と長期に分けて管理する。会話内容はそのまま短期記憶として保存し、直近の必要な件数だけをAIへのリクエストに添える。すべてを保持し続けられないため、重要な部分だけを長期記憶へ変換する。この処理は「Google Cloud」のエージェント実行基盤が担う記憶管理機能「Memory Bank」が担う。

複数のAIを駆使するマルチエージェント構成には、Googleが公開したオープンソースの開発キット「Agent Development Kit」(ADK)を使った。組み合わせるだけで構築が組めるため作業を効率化でき、膨大な工数はセキュリティ強化に回した。

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