縁結びの神として名高い出雲大社(島根県出雲市)の西約1キロにある砂浜「稲佐の浜」に設けられた撮影ポイントが最近、SNSを通じて話題になっている。小石を積み重ねた高さ約15~20センチ、幅約25~30センチの小さなアーチ越しに、日本海に沈む夕日と砂浜から突き出た小島「弁天島」を撮影すると、幻想的な写真になるとして、観光客が次々とスマートフォンで撮影している。
「神様歓迎ゲート」と命名
アーチを作るのは、出雲市のアマチュアカメラマン、須田仁志さん(62)。15年ほど前から写真撮影のために稲佐の浜に毎日のように通う中で、「観光客に楽しんでもらいながら、出雲の思い出にしてほしい」と、趣味の一環で作り始めた。
午後4時頃に稲佐の浜へ到着すると、小石が入ったバケツを車から運び出し、シンボルの弁天島に臨む場所で、断面が平らな石を組み合わせてアーチ状に積み重ねる。わずか1、2分の作業だが、基礎がしっかりしていないと途中で崩れたり、風で倒れたりすることもある。当初は1連を作るのがやっとだったが、徐々に慣れ、現在は場所を変えながら2連と3連のアーチを作る。
鏡を使った撮影も人気
アーチの手前には鏡を寝かせておき、スマホを鏡に近づけると、実物と鏡に映ったアーチが一つの円を成し、その奥に弁天島が見える写真が撮影できる。須田さんは、稲佐の浜が「神迎神事」の舞台であることにちなみ、このアーチを「神様歓迎ゲート」と名付けた。
記念撮影を希望する観光客には、預かったスマホを手にアーチの前で膝をつき、「1歩後ろに」「腕を伸ばしましょう」などと指示しながら撮影。夕日が弁天島の頂上に重なり、火のついたろうそくのように見える写真が撮れると特に喜ばれるという。「観光客との何げない会話が楽しみになっている」と話す。
海からの贈り物
海が荒れた日の砂浜では、漂着したイカやウミヘビ、ブランデーの瓶など思わぬ宝物に出会うこともあり、「神様のプレゼントかもしれない」とヤシの実をアーチのそばに置いたこともある。稲佐の浜に通い続けてきたからこそのおもてなしだ。
「出雲のご縁を持ち帰り、再び訪れてもらえれば」と、真っ黒に日焼けした顔で笑う。アーチには、縁結びの聖地にある砂浜から、幸せの連鎖が続いてほしいとの願いが込められている。
稲佐の浜とは
稲佐の浜は南北約13.5キロにわたる砂浜で、古事記の「国譲り神話」の舞台として知られる。旧暦10月の日没には、出雲大社の神職が全国から集まる八百万の神々を迎える「神迎神事」が行われる。日本海に沈む夕日が弁天島のシルエットを際立たせる風景は、日本遺産「日が沈む聖地出雲」を代表する。出雲大社から徒歩約15分。



