2027年、東京を「完全無人タクシー」が走る日が来るかもしれない。9月15日、タクシー配車アプリを手掛けるGO、大手タクシー会社の日本交通、自動運転技術を開発する米Alphabet傘下のWaymo(ウェイモ)が戦略的パートナーシップを結んだ。2027年中に、国内初となる「自動運転レベル4」に当たる完全無人のタクシー運行を目指す。
完全無人タクシー、東京で100台規模に拡大へ
発表によれば、完全無人タクシーは東京都内で100台規模まで拡大する計画で、都内7区ではすでに日本交通の乗務員が同乗する形での試験走行が進んでいる。
3社の役割分担はこうだ。日本交通が現場の運行管理と営業所運営、カスタマーサポートを担当する。GOは、サービス全体の設計と地域のタクシー事業者との連絡を手掛ける。Waymoは、自動運転技術と運用基盤、車両管理システムを提供する。
「頭脳」は米国製、ティアフォーCEOは「国産」に意欲
この組み合わせをよく見ると、日本側が担うのは接客接点と管理、規制対応に集約されており、肝心の「頭脳」は米国製だ。
Waymoらの発表から2週間ほどの9月1日、自動運転ソフトウェアを開発するティアフォー(東京都品川区)の加藤真平CEOは、いわゆるX(旧Twitter)に投稿した自動運転を報じる投稿を引用して次のように続けた。
「量産モデルの自動運転レベル4を実現できれば、日本の勝ち筋が見えてきます。全力で必達します。しかも国産で。」
後ほど詳細に考察するが、ここで「国産」と加藤氏が意識しているのは、米国製の頭脳が日本の自動車産業に入り込もうとしている現実も踏まえていると推察できる。
熱を帯びる自動運転技術の開発シーン。タクシーやトラック、バス、乗用車など自動運転の適用先によって各社の戦略は異なる。大きな動向を理解する上で鍵になるのが、Waymoとティアフォーが目指す「世界モデル」という新たな仕組みの構造だ。
生成AIの次に「世界モデル」が来る? ティアフォーが目指す理由
世界モデルの推進を特に強く発信しているのが「ディープラーニングの父」として知られる計算機科学者のヤン・ルカン氏だ。同氏は長年率いてきた米MetaのAI研究部門を離れ、昨パリに世界モデル専門のスタートアップ、AMI Labsを設立した。同社は3月、シードラウンドで約10億3000万ドルを調達し、9月下旬時点の調達前評価額は約35億ドルにまで達している。
そもそも世界モデルとは何か。世界モデルとは、AIが物理法則や空間データを理解してシミュレーションできる技術だ。端的に説明するならば、大規模言語モデル(LLM)が「次の単語」を予測する仕組みで文章を生成するのに対し、世界モデルは「ある行動を取ったら世界がどう変わるか」を予測する。
世界モデルの概念を説明する際に「赤ちゃんは言葉を覚える前に、物理的引力を認識する」という例え話がよく用いられる。つまりLLMはあくまで言語モデルにすぎない。言葉で伝えないと世界の中の物理法則を認識できない。LLMは世界を見ることはできないのだ。
この点で、例外なシチュエーションに依存しやすい現実世界での「運転」という動作に対しては、世界モデルの方が謙虚で信頼性が高くなり得る。現実世界の理解や作動が伴う「フィジカルAI」も同様だ。こうした背景から世界モデルが注目されている。
Waymo、世界モデル発の運転AIを実装 無人で3億キロ超を走破
Waymoは、世界モデルをすでに社会実装している。2月6日、同社は英Google DeepMindの世界モデル「Genie 3」を基盤にした「Waymo World Model」を発表した。悪天候や障害物など実走行では依存しにくい「まれな状況」を仮想空間で生成し、運転AI「Waymo Driver」に数十万マイル分の仮想走行を積ませる仕組みだ。
実走行の蓄積も桁が違う。Waymoは2026年3月までに、無人走行で累計2億2060万マイル(約3億5500万キロ)を走り、運行する都市で同じ距離を走った平均的な人間の運転手と比べて重傷以上の事故が94%少ないと説明している。この頭脳が、2027年に東京へ来る。