大阪府警は、生成AI(人工知能)などの情報技術を駆使して、増加する投資詐欺やロマンス詐欺の被害防止に乗り出している。2026年6月には、香川大学サイバーセキュリティセンターで自治体向け技術支援を手がける平野敏範客員教授(47)を「防犯ITアドバイザー」に委嘱した。これは、デジタル詐欺の増加に対応するために府警が新設した役職で、詐欺の手口を体験できるサイトを通じた啓発活動に力を入れる。
仮想体験システムで詐欺の手口を学ぶ
平野客員教授は2025年、府警と協力して特殊詐欺の手口をパソコンやLINEで体験できるシステムを開発した。このシステムは全国の県警で活用され、2026年3月にはデジタル政策フォーラムの「サイバーセキュリティアワード2026」企画部門で最優秀賞を受賞した。投資詐欺の体験では、「投資に興味はあるか」「今の収入に満足しているか」などのアンケートに画面上で回答すると、お薦めの投資プランが紹介されるなど、仮想的なやり取りを通じて詐欺の手口を理解できる。
2026年6月4日、府警本部で石川嘉嗣生活安全部長から委嘱状を受け取った平野客員教授は、「生成AIなどの最新技術を使い、市民が気軽に利用できる防犯対策を考えたい。エンジニアが関わることで、できることもあるはず」と意気込みを語った。
AI子署長による啓発動画を公開
仮想体験のほかにも、平野客員教授は生成AIを活用した「AI(あい)子署長」による啓発動画の制作に協力。府警は2026年5月からこの動画をYouTubeで公開している。動画は約14分間で、警察官を装って金銭をだまし取る「ニセ警察詐欺」や、恋愛感情を利用する「SNS型ロマンス詐欺」の手口と対策方法を、AI子署長がわかりやすく解説する。
動画内では、千葉県警の警察官を名乗る男がLINEの通話機能を使って逮捕状を示す実際の映像と音声も公開。AI子署長は「警察はSNSでやりとりを求めない」「詐欺の多くは国際電話でかかってくる」と注意を呼びかけている。
過去最多の詐欺被害、専門家と連携し迅速対応
平野客員教授は今後、新たな犯行手口に応じて仮想体験の内容を更新するほか、LINEなどを通じたアンケート調査の分析により啓発効果を検証する計画だ。府警によると、2025年のオレオレ詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺に加え、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数と被害額は過去最多を記録した。特殊詐欺では警察官をかたる手口が目立ち、認知件数は3317件(前年比25%増)、被害額は前年比約2.2倍の135億円に上った。SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数は1513件(同48%増)、被害額は1.6倍の203億円だった。
府警府民安全対策課は「犯罪手口は巧妙化している。専門家と協力して迅速に対応していく」としている。



