13日に投開票を迎える沖縄県知事選で、偽・誤情報がSNSに相次いで投稿されている。生成AI(人工知能)で作られた候補者に似た人物が重機でひかれる動画や、根拠不明のまま不安や怒りをあおる情報が拡散しており、専門家は「このままでは有権者の判断がゆがめられる」と懸念する。
AI生成の偽動画が49万回以上表示
X(旧ツイッター)では6日、「沖縄県は日本で一番県民を蔑(ないがし)ろにしている」といったコメントとともに約6秒の動画が投稿された。動画では、「We♡デニー」のプラカードを手にした人たちが歓声を上げた次の瞬間、現職の玉城デニー氏によく似た青い柄シャツ姿の男性が地面に押し倒され、ロードローラーのような重機にひかれてしまう。
動画脇には生成AI機能「Grok Imagine」で作成したとの表示があり、10日夕時点で49万回以上表示された。この動画に対しては、「越えてはいけない一線を越えた」との指摘が相次いだ。別の候補者を支持する複数のユーザーからも「いくらなんでも、これはない」などと削除を求める声があがった。
Xは特定の個人を標的とした嫌がらせや侮辱となるコンテンツを禁止しているが、動画は10日現在も削除されていない。投稿主は8日、玉城氏を名指しして「殲滅(せんめつ)したいだけ」などと投稿を続けている。
根拠不明の不安をあおる動画も
「貴方の全てが奪われても良いですか?」と問いかける根拠不明の動画もある。6日に投稿された動画では、「沖縄を中国が奪おうとしています」「貴方の全てが中国共産党に奪われても良いですか?」「明日のウイグルになりますよ」などと言葉を重ね、「いやなら選挙に行きましょう」と呼びかける。これもAIで作られたとの表示がある。
動画に候補者名は出てこないが、動画を引用しながら玉城氏と結びつけて「再選したら沖縄は中国になってしまう」と中傷する投稿が多い。
一方、新顔の古謝玄太氏を巡っては、本人のような顔写真に「国益にかなう沖縄をつくる」と記した画像が8月下旬に出回り、「県民の利益より国益か」と批判が噴出した。一見すると選挙ポスターにも見えるが、生成AI「ChatGPT」など米オープンAIのツールで作られたものか識別できる「SynthID」という機能を使って朝日新聞社が調べたところ、「このコンテンツはOpenAIのツールを使用して生成された」と判断された。
陣営も懸念を表明
古謝氏の陣営関係者は「画像のようなフレーズを使ったことはありません」と否定。その後、古謝氏の支持者が画像を作成したと名乗り出て「沖縄だけでなく日本のためにもこの人がいいと思った」などとXで謝罪した。画像を含む投稿は削除されたものの、画像は古謝氏への批判に使われ続けている。
知事選には6人が立候補していて、朝日新聞が5、6両日に実施した情勢調査によると、古謝氏がやや先行し、玉城氏が激しく追う事実上の一騎打ちだ。こうしたSNSの現状に、玉城氏の陣営幹部は「巧妙なデマを信じて投票する人が相当出てきてしまうのではと懸念している」と話し、古謝氏の陣営幹部は「沖縄の課題を認識していただくのは非常にありがたいが、あまり過熱しすぎると困る」とする。



