AI攻撃が誰の手にも渡る日は近い、ソフトバンクが実演した2時間で崩れる企業防衛の現実
AI攻撃が誰の手にも渡る日は近い、ソフトバンク実演の企業防衛崩壊

ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は、AIによるサイバー攻撃が近い将来、誰でも実行可能になると警告した。同社が実施したデモでは、企業の防御システムがわずか2時間で突破される様子が実演され、現行のセキュリティ対策の限界が浮き彫りになった。

オープンモデルと攻撃リスクの拡散

ソフトバンクの宮川潤一社長兼CEOは、講演で中国発のオープンAIモデルが日本企業に広く採用されている現状を紹介。「日本の企業が一番多く採用している」と述べ、オープンモデル自体を否定するものではないと強調した。問題はモデルが公開されることではなく、攻撃という危険な用途が管理の外に出ることにある。孫氏の言う通り流れが止められないなら、いずれ出てくる前提で備えるしかないと指摘した。

「ワクチン接種」としての脆弱性診断

宮川氏は、企業が取るべき対策としてシステムの「モダナイゼーション」を挙げた。人間中心で設計されたシステムを、AI前提の設計・運用・コードへ刷新する取り組みだ。講演の冒頭では150年余り前のシカゴ大火を引き合いに出し、焼け野原になった街は燃えた建物を建て直すのではなく、燃えない構造の都市へ作り替え、後の摩天楼都市へと発展したと説明。企業のシステムも、攻撃されてから復旧するのではなく、止まらない基盤へ作り替えるべきだと主張した。「対岸の火事ではない」とも語り、グループ会社のアスクルがランサムウェア攻撃で受注・出荷業務を止めた実害に自ら触れた。

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効果は先のECサイトで実証済みで、同じシステムをモダナイズして再び攻撃させると、今度は侵入できなかった。ただし、システムの全面刷新には時間がかかるため、その間の応急策として6月に発表した「Patching as a Service(PaaS)」を提供。AIで脆弱性を洗い出し、優先順位をつけて修正パッチを当てるサービスで、宮川氏はこれを「ワクチン接種に近い」と表現した。攻撃されてから治療するのではなく、先に弱点を見つけて耐性を作る発想だ。

PaaSの成果と今後の展開

反響は数字に表れている。PaaSを発表した6月16日のイベントには約150社が招かれ、うち137社が診断を要望。すでに約50社の診断が完了し、商用システムの標準的な規模にあたるソースコード1000万行あたり、平均280件の脆弱性が見つかった。25%は早急な対応が必要な高リスクだった。重要インフラを担う企業ばかりの結果に、宮川氏は「少し驚いた」という。ソフトバンクは7月14日、提供対象を3000社へ広げて本格提供を開始。技術者1000人規模の体制で支える。

孫氏の描いた「止められない」進化は、経済成長の物語であると同時に攻撃力の拡散でもある。壮大なビジョンとサイバー防御という一見かけ離れた2人の講演は、この一点でつながっていた。宮川氏は「素早い実行こそ最大の防御になる」と講演を締めた。防御側に残された時間は、宮川氏の見立てが正しければ、数カ月という単位で刻まれている。

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