日清食品ホールディングスは、人工知能(AI)を活用したカップ麺の新フレーバー開発を本格化させている。同社はこれまで、新商品の開発に平均で約1年を要していたが、AIの導入により市場投入までの期間を半分の約6カ月に短縮することに成功した。2024年までに発売する全新商品の50%にAIを活用する目標を掲げている。
AIが提案する味の組み合わせ
日清食品は、過去の商品データや市場調査データ、さらにはSNS上の消費者の声などをAIに学習させ、新フレーバーの組み合わせを提案させるシステムを構築した。AIは、例えば「しょうゆとバター」「カレーとチーズ」といった従来の組み合わせに加え、「みそとココナッツミルク」など、人間の開発者では思いつきにくい意外な組み合わせも提案するという。
同社の広報担当者は、「AIが提案する組み合わせの中には、一見すると不味そうに思えるものもあるが、実際に試作してみると意外な美味しさを発見することがある。AIは人間の固定観念を打ち破る新たな可能性を示してくれる」と述べている。
開発コストの削減とスピード向上
AIの活用により、開発プロセスも大きく変化した。従来は、開発者が試行錯誤を繰り返しながら味を調整していたが、AIが最適な配合比率を提案することで、試作回数を大幅に削減できるようになった。これにより、開発コストは約30%削減され、開発期間も短縮された。
具体的には、AIが過去の販売データや原材料の価格変動データも分析し、コストパフォーマンスの高いレシピを提案する。例えば、特定のスパイスが高騰している場合、代替となる別のスパイスを提案するなど、コスト面でも最適化を図っている。
AI開発の背景と今後の展望
日清食品がAI開発に乗り出した背景には、即席麺市場の成熟化がある。国内の即席麺市場は頭打ち状態であり、新たな需要を創出するためには、よりスピーディーな商品開発と差別化が求められていた。
同社は2020年からAI開発に着手し、2022年にはAIが提案したフレーバーを実際に商品化。2023年にはAI活用商品の比率を30%にまで引き上げた。2024年には50%を目標としており、将来的には全商品の開発にAIを活用する構想も描いている。
また、AI開発のノウハウを他部門にも展開する計画だ。例えば、スープや即席ラーメンだけでなく、冷凍食品や菓子などの新商品開発にもAIを応用することを検討している。
業界への影響と課題
日清食品のAI活用は、食品業界全体にも波及効果をもたらす可能性がある。競合他社も同様の取り組みを強化しており、AIを活用した商品開発が業界の標準となる日も遠くないと見られる。
しかし、課題もある。AIが提案するフレーバーは、あくまで過去のデータに基づくものであり、全く新しい市場を開拓できるとは限らない。また、AIに頼りすぎると、人間の開発者の創造性が損なわれるリスクも指摘されている。日清食品は、AIと人間の開発者の役割を明確に分担し、AIはあくまで補助ツールとして活用する方針だ。
同社の研究開発責任者は、「AIは強力なツールだが、最終的な判断は人間が行う。AIが提案したフレーバーをそのまま商品化するのではなく、人間の開発者が試食し、改良を加えるプロセスを重視している」と語る。



