アジアの新興国において、スマートフォンを利用した決済サービスが急速に拡大している。キャッシュレス決済の比率が50%を超える国も出てきており、現金主体だった経済構造が大きく変わりつつある。特にインドネシアやフィリピン、ベトナムなどでは、QRコードを使った決済が広く浸透し、日常生活のあらゆる場面で利用されるようになった。
キャッシュレス比率が急上昇、インドネシアでは5割超え
調査会社のデータによると、インドネシアでは2023年のキャッシュレス決済比率が前年の約35%から50%を超え、初めて過半数に達した。フィリピンでも同様に40%近くまで上昇しており、タイやベトナムでも30%を超えている。これらの国々では、政府がキャッシュレス化を推進する政策を打ち出し、インフラ整備を加速させている。
特にインドネシアでは、中央銀行がQRコードの統一規格「QRIS」を導入し、加盟店での相互運用性を確保したことが普及を後押しした。これにより、異なる事業者のQRコードでも一つのアプリで決済できるようになり、利用者の利便性が大幅に向上した。
現金依存からの脱却、金融包摂に貢献
スマホ決済の普及は、従来銀行口座を持たなかった人々にも金融サービスを提供する「金融包摂」の進展にもつながっている。インドネシアでは、成人の約半数が銀行口座を持たないとされるが、スマホ決済アプリを通じて初めて金融取引を行う人が増えている。
フィリピンでも同様の傾向が見られ、海外からの送金をスマホで受け取るケースが一般的になっている。同国では海外労働者からの送金がGDPの約10%を占めるが、従来は現金で受け取るために長蛇の列ができることもあった。スマホ決済の導入により、手数料の低減と迅速な資金アクセスが実現した。
競争激化、地元企業と海外勢の攻防
市場の拡大に伴い、地元のフィンテック企業と海外の大手プラットフォーマーとの競争が激化している。インドネシアでは、地元企業のGoPayやOVOがシェアを競う一方、中国のアリペイやウィーチャットペイも進出している。しかし、政府がデータの現地保存を義務付けるなど規制を強化しており、海外勢には厳しい環境となっている。
フィリピンでは、地元のGCashが市場をリードし、利用者数は約8000万人に達している。一方、韓国のカカオペイや中国の決済大手も参入を模索しており、今後の競争構図が注目される。
課題はセキュリティとデジタル格差
スマホ決済の急速な普及には、セキュリティ面での課題も浮上している。インドネシアでは、フィッシング詐欺や不正アクセスによる被害が報告されており、利用者のリテラシー向上が急務となっている。また、都市部と農村部でのデジタル格差も課題で、スマートフォンの普及率や通信環境の整備が遅れている地域では、キャッシュレス化が進んでいない。
専門家は「政府と民間が連携し、教育とインフラ整備を同時に進める必要がある」と指摘している。アジア新興国のスマホ決済市場は今後も拡大が見込まれるが、持続可能な成長のためにはこれらの課題への対応が不可欠だ。



