ユーザー企業とSIer(システムインテグレーター)の関係が、いま静かに変わりつつある。AI活用を前提としたITシステムの実現が急務となる中、その足を引っ張るレガシーシステムの解消がより重視されるようになっている。そこで焦点が当たるのが、「ITシステムの主導権を自社に取り戻せるか」という、古くて新しい課題だ。
「ITmedia エンタープライズ」で公開したブックレットの中から、この課題に向かい合った記事を集めた3冊を紹介する。
自社主導でシステム更新を実現したJFEスチールの事例
最初に取り上げるのは、システム更新の主導権を自社で握ったJFEスチールの事例(「なぜ、JFEスチールは『非ITエンジニア9割』でシステムモダナイズに挑んだのか? 更新成功の布石」)だ。同社は過去、システム更新を断念した経緯がある。それにもかかわらず今回は、鉄鋼エンジニアが9割、ITエンジニアが1割という「異例の布陣」で更新に挑み、レガシーシステムを更新した。なぜ今度はやり遂げられたのか、なぜこの布陣を選んだのか。ブックレットでは、この問いに加え、レガシーシステムモダン化委員会の総括レポートの執筆者とともに、日本企業のシステム更新が進まない背景に迫り、SCSKの取材や日立製作所の有識者が語る「再レガシー化を防ぐための3つの処方箋」を取り上げている。
AI時代にSIerは生き残れるか
2冊目は、ユーザー企業とSIerの関係の変化に目を向けたITRによる考察(「『AIが前提となる世界』でSIerは生き残れるか?」)だ。ITコンサルティングと調査を手掛けるアイ・ティ・アールのアナリストは、ユーザー企業が「何を作るか」ではなく「何を実現したいか」を直接AIに伝える時代になりつつあると指摘する。その中でSIerには単なる実装代行ではない価値が求められ、工程分業や多重下請けを前提とした従来型のSIビジネスは変革を迫られる。ユーザー企業の側から見れば、これは「任せる相手」がどう変わるのか、今後何を任せるべきかという問いでもある。
NEC社長が説く「勝者の条件」
3冊目は、ITサービス大手の視点から業界の変質を読み解くNECのブックレット(「NEC社長が説く『SIerの勝者の条件』 2026年度の国内IT需要の行方」)だ。NECの森田隆之氏(取締役 代表執行役社長 兼 CEO)は、AIによる産業革命と新たな安全保障環境という2つの変化を挙げ、グローバルで45兆円を超えるAIサービス市場が新たに生まれると見通す。「ITサービス」が数年後に「AIサービス」に置き換わる可能性がある中で、ベンダーとユーザーの双方が問われる選択とは何か。森田氏が示す「勝者の条件」の中身は、ブックレットで語られている。併せて、富士通とNECの決算から2026年度の国内IT需要の行方も考察している。
ユーザー企業とSIerの関係は、もはや「任せておけば安心」という一言では語れなくなっている。ITシステムの主導権をどこまで自社で握り、外部のパートナーとどう付き合うか。3冊のブックレットは、その問いに向き合うIT部門にとっての判断材料になるのではないだろうか。



