三井不動産、NTT東日本、NAVER Cloud Corporationの3社は、東京ミッドタウン八重洲でデジタルツインやフィジカルAIを活用したロボットデリバリーサービスを開始した。館内飲食店からシェアオフィスへフードやドリンクを配送するもので、サービス開始に合わせて説明会と体験会が開催された。
ロボットデリバリーサービスの概要
同サービスでは、東京ミッドタウン八重洲B1F・5F館内飲食店の商品を、デリバリーロボットが7F「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」まで配送する。オフィスワーカーは、日常的に使い慣れたLINEから商品を注文でき、会議や業務の合間にも、オフィスにいながら館内飲食店の商品を手軽に受け取ることができる。
デリバリーロボットは、クラウド上に構築された「デジタルツイン」を複数台のロボット共通の“デジタルマップ”として活用。館内の構造や移動ルートをデジタル空間上で把握し、セキュリティドアやエレベーターと連携することで、大規模複合施設内でも複数フロアをまたいだ配送を実現する。
この取り組みは、フィジカルAIを搭載したロボット配送によりオフィスワーカーの利便性向上と館内飲食店の利用促進を図るとともに、デジタルツインを活用して大規模複合施設の運営の高度化につなげる、先進的な施設運営DXの取り組みとなっている。
東京ミッドタウン八重洲をDX実証フィールドに
説明会では、三井不動産 ビルディング本部 運営企画二部 事業グループ 主任の杉本達哉氏により、「東京ミッドタウン八重洲における先端技術の取組」として、東京ミッドタウン八重洲の特徴や現在行われている取り組みなどが紹介された。
東京ミッドタウン八重洲は、オフィスを中心にホテルや商業施設、教育施設、バスターミナルなどを備えたミクストユース型施設だ。三井不動産では、こうした複合施設を舞台に、リアルとデジタルを組み合わせた施設運営DXを推進しており、清掃ロボットや運搬ロボット、AI防犯カメラ、タッチレスオフィス、人流分析システムなどを導入してきた。今回のデリバリーロボット「Rookie」は、2025年度の実証を経て本格導入された最新の取り組みとなる。
杉本氏は、「先端技術活用」をテーマに、東京ミッドタウン八重洲を都市型DXの“動く実証フィールド”として位置付ける考えを説明。デジタルツインなどの先端技術を活用し、働き方や施設利用の変化に合わせて施設運営をアップデートするとともに、大規模複合施設でのトライ&エラーを通じて新たなサービス体験と施設運営モデルの創出を目指すとした。
そして、「行きたくなる街」「行きたくなるオフィス」を、実証を通じて常にアップデートするため、「実施設で試す」「現場課題に即す」「実装につなげる」の繰り返しこそが、「東京ミッドタウン八重洲のミッションであり、こういったチャレンジは我々産業デベロッパーとして不可欠なもの」と締めくくった。
ロボットを社会インフラへ
一方、ロボットを「使える技術」から「使われ続けるインフラ」に変えていくために、「NTT東日本は、通信技術と現場で培ったエンジニアリング力でしっかり支えていきたい」と述べた、NTT東日本 マーケティング統括本部 ビジネス開発本部 無線&IoTビジネス部 先端無線/CPSビジネス担当 担当部長の増山大史氏。
NTT東日本は、地域課題の解決を通じて培った現場力を生かし、ロボットの社会実装を支援していく考えだ。ロボットの運用には安定した通信環境に加え、現場で運用を支える「フィールドエンジニアリング」が不可欠であり、通信技術とエンジニアリング力を組み合わせながら、ロボットが継続して稼働できる環境を整えていくという。
また、労働人口の減少が進む中、ロボットは人の代わりではなく、人がより付加価値の高い業務に注力できる環境をつくる「共に働くパートナー」になるべきだと説明。「本領発揮には導入後が重要」であり、フィールドエンジニアリングやフィジカルAIを活用することで、ロボットを「使える技術」から現場で働き続ける「仕組み」へ進化させていきたいとした。
さらに今回の取り組みについては、三井不動産の「施設運営」、NAVER Cloudの「AI」、NTT東日本の「現場力」を組み合わせた社会実装への第一歩と位置付ける。今後はロボットのマルチタスク化やフィジカルAIの進化を見据えながら、ロボットやAI、デジタルツインなどの技術を「本当に使われ続けるインフラ」へと発展させていく考えを示した。
デジタルツインなど3つの基盤技術
続いて、NAVER LABS CORPORATION Robotics Group Group LeaderのJongyoon Peck氏が、今回のロボットデリバリーサービスを支える技術について説明した。同サービスは、空間をデジタル化する「デジタルツイン」、ロボットやビル設備を連携する「ARC」、そして「フィジカルAI」の3つの基盤技術によって実現しているという。
Peck氏は、フィジカルAIについて、「パソコンやモバイルで実現されてきたITサービスを現実世界へ拡張した技術」と説明。AIエージェントがインターネット上のサービスを実行するように、ロボットが現実世界でAIエージェントとして動くことになると述べた。
「デジタルツイン」は、ビル全体をロボットやARが理解できるデジタルマップとして構築したもので、ロボットの位置認識やシミュレーションに活用される。レイアウト変更時も再スキャンによって更新できるという。また、GPSが利用しにくい屋内でも、ロボットのカメラ映像とデジタルツインを照合することで、高精度な位置認識を実現している。
一方、「ARC」は、ロボットやサービス、エレベーター、セキュリティなどビル設備を連携する統合プラットフォームで、異なるメーカーのロボットも統合管理できる点が特徴だ。デジタルツインと組み合わせることで、ロボットデリバリーだけでなくAR案内や空間コンテンツなど、多様なサービスへの展開も可能になるという。
最後にPeck氏は、今回の取り組みを3社によるスマートシティ実現に向けた第一歩と位置付け、今後は東京ミッドタウン八重洲にとどまらず、より広い都市空間への展開に期待を示した。
ロボット配送サービスの仕組み
東京ミッドタウン八重洲におけるロボットデリバリーサービスでは、館内飲食店からオフィスフロアへデリバリーロボット「ROOKIE」がフード・ドリンクを配送する。現在、対象となる店舗は5F(1店舗)とB1F(4店舗)の計5店舗で、デリバリーロボットは5Fに1台、B1Fに3台を配置。7Fの「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」からの注文のみが受け付けられている。
基本的に流れとしては、7Fの「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」からLINEを使って注文すると、注文を受けた飲食店が商品を準備。受注された段階でロボットは商品を受け取りに対象店舗へと向かう。
飲食店で商品を受け取ると、7Fに向かって自律走行。セキュリティドアやエレベーターも、ARCを通して連携することにより、人の手を必要とせずに通過できるようになっている。
無事、7Fの「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」に到着。飲食店での商品の出来上がり時間や、エレベーターの混雑状況によって所要時間は変動するが、注文から商品が届くまでの時間は、おおよそ15~30分程度になるという。
デジタルツインとARを連携
デジタルツインの活用例として、ARサービスとの連携を紹介。スマートフォンをかざして歩くと、カメラを通した実際の映像とデジタルツインが照合され、位置情報を獲得。任意の場所で、画面上に蝶を飛ばし、その蝶についていくと花畑に到着するといった宝探し的なコンテンツにも利用できる。
実証を経て本格導入へ
デリバリーロボットサービスは、2025年度の実証実験を経て本格導入された。三井不動産の杉本氏は、「本当に地道に、地下一階から何度も配送を行うなど、反復をずっと繰り返していた」と振り返る。「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」の利用者にも約10日間試用してもらい、安定稼働を確認するとともに、「地下まで移動しなくてもよいので便利」といった利用者の声を受け、本格導入に踏み切ったという。
一方、NTT東日本の増山氏は、「日本ではまだロボットの存在を意識しない環境が当たり前である中、大勢の人の前でロボットを動かしているのはおそらく今回が初めて」と説明。公共空間で運用するためには、人向けの館内ルールに合わせた細かなチューニングが必要だったが、杉本氏は「デジタルツインとの連携によって位置情報がすごく正確なので、細かなルールにも問題なく対応できた」と語った。
現在は7Fの「ワークスタイリング 東京ミッドタウン八重洲」のみで利用可能だが、杉本氏は「今後はさらに多くのフロアで対応できるようにしていきたい」と今後の展望を示した。



