情報漏えい事件などが頻発する中でよく使われる言葉の一つが「平文」だ。通常に音読みすれば「へいぶん」だが、通信やITの業界では昔から暗号化していない情報を指して「ひらぶん」と読む人が多い。なぜそうなったのか。
オンライン国語辞典での検索結果
まず「オンライン国語辞典」で検索すると、「平文(へいぶん)」と「平文(ひらぶん)」が並んで表示された。説明はどちらも同じで、どちらでも間違いではないことが分かる。
続いて、1990年代から業界の有志が編集してきたという伝説の用語サイト「通信用語の基礎知識」で調べた。歴史を知りたいときは、こういったサイトは貴重だ。すると読みは「ひらぶん」で、「かつて、日本軍は漢字を当て訓読みする習慣があり、これを『ひらぶん』と読んでいた」とある。
当て訓読みの習慣とその理由
当て訓読み(ゆとうよみ)とは、「雨具(あまぐ)」「身分(みぶん)」などのように1文字目を訓読みし、2文字目を音読みする読み方のこと。そして旧日本軍は、音声伝達の際に音読みによる聞き間違いを防ぐため、訓読みと音読みを混在させるなど特殊な読み方をしていたという。聞き間違い防止という理由は納得だ。
ただし、「通信用語の基礎知識」の説明には続きがあった。「1970年代から『明るい暗号運動』という暗号技術を普及させる運動が高まり、JISでは『へいぶん』という読みで登録された」。
JIS規格での読み方の変遷
JISは「へいぶん」読み? 業界用語的な読み方をやめてハードルを下げる意図だったのかもしれないが、「ひらぶん」読みをすると漢字が読めない人みたいになってしまいそうだ。
調べると、1987年に作られたJISの情報処理用語(セキュリティ)規格である「JIS X 0008」のことのようだ。しかし、この規格は2001年にアップデート版の「JIS X 0008:2001」に置き換えられており、内容を確認すると「平文(へいぶん、ひらぶん)」と併記していた。アップデートに関わった誰かが「へいぶん」単独表記に文句を言ったのかもしれない。
JIS X 0008:2001の廃止と現状
さらに調べるうちに、そのJIS X 0008:2001も関連する国際規格の動向や技術の変遷に伴い、17年で廃止されていたことが分かった。現在はどうなっているのか。JISC(日本産業標準調査会)のサイトで後継規格とされる「JIS Q 27000シリーズ」を一通り検索してみたが、「平文」という文字はあっても、ふりがなは付いていなかった。余計なことは書かないほうがいいと思ったのかもしれない。
結論:どちらも正しいが「ひらぶん」がITっぽい
結論:「へいぶん」「ひらぶん」どちらも間違いではないが、「ひらぶん」のほうがITっぽい。



