日本の5G普及が世界に後れを取る現状
5G通信技術の専門家である山内宏泰氏は、日本の5G戦略が国際的に大きく遅れをとっていると指摘する。2023年時点で、日本の5G人口カバー率は約60%にとどまり、韓国の95%や米国の80%を下回っている。この差は、周波数割り当ての遅延と基地局整備の課題に起因する。
周波数割り当ての課題
山内氏によれば、日本では5G向けの周波数帯域の割り当てが他国より遅れ、特にミリ波帯の利用が進んでいない。総務省の計画では、2020年から2023年にかけて段階的に割り当てが行われたが、実用化には時間がかかっている。この遅れが、通信事業者の投資意欲を削ぎ、カバレッジ拡大の足かせとなっている。
基地局整備の現状とコスト問題
基地局の整備も課題だ。日本では人口密度が高い都市部での需要が大きい一方、地方では採算性の問題から整備が進まない。山内氏は「1つの基地局の設置コストは約1000万円に上り、全国展開には数兆円規模の投資が必要」と述べる。このため、政府の補助金や税制優遇が不可欠とされる。
克服への道筋:官民連携の強化
山内氏は、日本の5G戦略を立て直すために官民連携の強化を提案する。具体的には、周波数割り当ての迅速化、基地局共有の促進、そしてローカル5Gの活用拡大を挙げる。特に、企業や自治体が自ら5Gネットワークを構築できるローカル5Gは、工場や農業などでの応用が期待される。
産業応用と経済効果
5Gの普及は、自動運転や遠隔医療、スマート工場など多岐にわたる産業に変革をもたらす。山内氏は「5Gの経済効果は2030年までに約50兆円に達する」と予測する。しかし、現状の遅れがこの恩恵を損なう恐れがあるため、早急な対策が必要と警鐘を鳴らす。
今後の展望と国際競争力
日本が5Gで国際競争力を維持するには、2025年までにカバー率を90%以上に引き上げる目標を掲げるべきだと山内氏は主張する。そのためには、通信事業者だけでなく、政府や地方自治体、企業が一体となった戦略が求められる。「日本は技術力で劣っているわけではない。スピード感と協調性が鍵だ」と同氏は結んでいる。



