NTTは、5G通信規格に必須となる標準必須特許(SEP)のライセンス料算定について、新たな方式「NSE(Numerical Standard Essentiality)」を提案した。この方式は、特許権者がFRAND(公正・合理的・非差別的)条件でのライセンスを宣言した後、特許の価値をより客観的に評価し、過剰なロイヤルティ請求を防ぐことを目的としている。
NSE方式の仕組み
NSE方式では、特許の技術的貢献度を数値化し、その数値に基づいてライセンス料を決定する。具体的には、特許がカバーする技術範囲や、規格への寄与度などを考慮したスコアリングシステムを採用。これにより、従来の「パテント・ホールディングアップ」(特許を盾にした過剰請求)や「ロイヤルティ・スタッキング」(多数の特許権者への累積的な支払い)の問題を緩和できるとされる。
業界への影響
NTTの提案は、5G関連の特許ライセンス市場に大きな影響を与える可能性がある。現在、5G SEPのライセンスを巡っては、QualcommやEricsson、Huaweiなどの大手企業間で紛争が絶えない。特に、自動車やIoT機器メーカーなど、これまで特許ライセンスに不慣れな業界への影響が懸念されている。NSE方式が普及すれば、ライセンス交渉の透明性が高まり、特許料の適正化が進むと期待される。
NTTの狙い
NTTは、自社が保有する5G SEPのライセンス収入増加も視野に入れている。同社は、光ファイバー網やデータセンターなど、通信インフラ事業で強みを持つが、特許ライセンス分野でも存在感を高めたい考えだ。また、NSE方式を業界標準とするため、他の特許権者や標準化団体への働きかけを強化する方針。
専門家は「NSE方式は理論的には魅力的だが、実際の運用には課題も多い。特許の価値評価は本質的に主観的であり、客観的な数値化には限界がある。また、全ての特許権者がこの方式を受け入れるとは限らない」と指摘する。
今後の展望
NTTは、2024年中にNSE方式の詳細を公開し、パイロットプログラムを開始する予定。成功すれば、5Gだけでなく、次世代の6G規格でも同様の方式が採用される可能性がある。特許ライセンスの公正さと効率性を両立する新たな枠組みとして、業界内外から注目が集まっている。



