サッカー・ワールドカップ(W杯)の北中米3か国大会は、約40日間の熱戦が大詰めを迎え、間もなく決勝を迎える。記者は開幕前日から現地に入り、日本の敗退が決まるまで約20日間、取材を続けた。日本戦全4試合を生で見た中で、最も印象に残ったのは「応援が持つ力」だった。
オランダ戦での逆転ムード
米テキサス州で行われた1次リーグ初戦のオランダ戦。観客席の7割がオランダのオレンジに染まる中、日本は格上相手に2度リードを許す苦しい展開だった。「勝てないだろう」――失点するたびに観客席に諦めの空気が漂ったが、1点を追う80分頃、スタジアムの空気が一変した。
「ニッポン! ニッポン!」。決して多くない日本サポーターの声援がひときわ大きくなり周囲に広がり、スタジアム全体が日本を後押しする雰囲気に。慣れない日本語で「ニッポン」コールに参加する外国人サポーターも目立った。その応援が選手に届いたのか、日本は徐々にオランダゴールに迫り、89分の劇的な同点ゴールで貴重な勝ち点1を得た。
試合後、千葉県柏市の自営業、高橋完聖さん(35)は「サポーターが最後まで諦めない空気を作り、相手をのみ込んだ」と語った。
チュニジア戦での圧倒的な応援
親日国とされるメキシコのモンテレイが会場となったチュニジア戦では、日本サポーターが観客の9割を占め、圧倒的な存在感を示した。開始早々に先制したことでボルテージは最高潮に達し、日本のパス回しに「オーレ」というかけ声が響く時間帯もあった。
地元のメキシコ人、ヘスス・ロドリゲスさん(29)は「ポケモンやワンピースは誰でも知っている。親しみのある日本を応援するお祭りだよ」と笑顔で語った。
ブラジル戦でのアウェー感
決勝トーナメントでの王国ブラジルとの一戦は打って変わって、完全アウェーの雰囲気だった。記者が座った席の周りはブラジルの黄色い服を着た人で埋まった。日本の1点リードで迎えた後半最初の10分間、ブラジルサポーターの勢いはすさまじく、エースのビニシウス選手が観客をあおるしぐさをすれば大歓声が湧いた。日本サポーターも懸命に声援を送ったが、黄色い壁に打ち消され、終盤に逆転を許す結果となった。
選手たちは敗退後の7月5日、日本サッカー協会の公式ユーチューブチャンネルを通じ、「応援してくれたみなさんのおかげで強くなれました」(谷口彰悟選手)などとサポーターに感謝の言葉を述べた。
応援の力を示すデータ
応援が選手の力になっていることを示すデータもある。現在のパナソニックホールディングスと東京大が2021年に共同で行った研究では、声援がある中でプレーした野球の投手のコントロールが、声援がない場合と比べて35%向上したという結果が出ている。緊迫する場面などで、もう一踏ん張りする「活力」になっていることが分かる。
今大会で見られなかった「最高の景色」。その道のりは長く、険しいものだが、応援の力が選手を後押しするのも事実だ。4年後に史上初のベスト8、その先の優勝に近づくには、応援の「声」が不可欠だと記者は考える。



